MNPのキャッシュバックを廃止すべきというのは最もな話である。過剰なキャッシュバックは前述の北俊一氏の指摘もあり、2014年春には一旦落ち着きを見せたはずだったが、その後また、とある通信事業者が始めると、それの対抗策として他の通信事業者も追随するという形でイタチごっこを続けてきた。 では通信事業者の本音はどうなのだろうか。じつはNTTドコモはこれまでも何度かキャッシュバックを廃止したいと表明していたことがあった。つまり競争環境にあって仕方なく対抗してきたということであろう。本音はキャッシュバックをやめれば増益となる。その増益額も決して少ない額ではない。総務省の要請は「渡りに船」な状況ではなかっただろうか。 一方で、キャッシュバックが廃止された場合に困るのはどこであろうか。やはり影響が大きいのは販売店であろう。スマホ端末を売らなくてはビジネスが成り立たないが、まさにキャッシュバックに充当する販売奨励金でなんとかつないでいるという状況であろう。通信事業を事業者とともに支えてきたという自負もあろう。通信事業者としても簡単に見捨てるわけにはいかない。こうしたことから「段階的に是正していく」としつつ、何らかの救済策(新たな販売施策)を模索していくものと考える。 結局のところ、首相による「電話料金の見直し」という発言から始まりながらも、肝心な「消費者」にとってメリットのある見直しとはいえず(「低廉な料金プラン」と言っても、ただ単にデータ容量を少なくしたものが作られるだけ)、煮え切れない感じが拭えないのだろう。 以上、2015年を振り返ると、ネガティブな話題が多い印象も受けてしまいそうであるが、言ってみれば大きな「転換点」となる1年であったのではないか。スマホのシェアの件や、キャッシュバック増額による乱売をポジティブに捉えれば、おそらく2016年は国内における中古スマホ市場の形成とMVNOのさらなる躍進に大きな注目が集まっていきそうだ。 ウェアラブルデバイスについても、中途半端感を今後払拭し、さらに高度化が進むセンシング技術が搭載されることで、2016年には改めて注目されるヒット製品も登場するかもしれない。いずれにしても、変化が大きいといわれるICT業界の中にあって、とくにモバイル業界は常に変化がもたらされるワクワクした世界であることは間違いなさそうだ。
【木暮祐一のモバイルウォッチ】第99回 これぞ、“駐車場IoT”! 駐車場検索アプリ「Smart Park」のビジネス展望とは 2016年10月20日 日頃、自動車を足代わりに使っている人には欠かせなくなりそ…