台風やゲリラ豪雨、雷や土砂災害など、気象災害による被害は今も昔も日本全国で起きている。先頃も台風10号の影響で北日本に記録的な大雨をもたらし、浸水や土砂災害、堤防決壊など、大きな被害が出た。 そうした「気象災害から身を守る」というコンセプトのもと、1冊の本が7月に出版された。関東広域圏をカバーするラジオ局・文化放送のアナウンサーであり、気象予報士でもある伊藤佳子アナと鈴木純子アナによる著書『いざというときに身を守る 気象災害への知恵』(発行:求龍堂)がその本だ。 同書の著者である伊藤アナと鈴木アナにお時間をいただき、ラジオの天気予報をもっと活用するためのポイントや、誰でも自分や家族を守れるようになるための「気象災害への知恵」を聞いてきたので、前後編に分けて紹介していこう。 前編となる今回は、「ラジオの天気予報をもっと活用するためのポイント」ということで、天気予報に関する言葉をいろいろと解説してもらった。●天気予報の「東京」はどこを指すのか? 普段何気なく聞いている天気予報だが、「東京は晴れ」と言われたらどこまでが東京なのか? 「明日の東京の降水確率は50%です」と言われたら、“降るか降らないならいつでも50%じゃないの?”と思ったり、「最高気温は、36度です」と言われても“絶対36度以上あるでしょ?”と思うことは珍しくない。 まず、天気予報で言われる“東京”の定義だが、伊藤アナは次のように説明する。「私たちがサラッと“東京”と放送でいう時には、東京23区と多摩地区を含めた地域を指します。ご存じのように伊豆諸島や小笠原諸島も東京都なんだけれど、場所も天候も違いますでしょ。ただ、東京に含まれる23区と多摩地区も広いので天候が異なることもあります。例えば夏の暑い日などには、“ところによりにわか雨があるでしょう”と聞くことがあると思いますが、この“ところにより”は、東京における山沿い地区である“多摩西部”であることが比較的多いです。これは、夏は地上付近が暖められて、山沿いではにわか雨が降りやすくなるからです。もちろん具体的な地名を入れた方が詳しい情報にはなるんですが、音声だけで伝えるラジオの場合は、情報が多すぎると、かえって伝わりにくい面もあるので、伝わりやすい表現は常に意識しています」 今回は、東京を例に出してもらったが、その他の地域でも天気予報をよく聞くと、「山沿い」「海沿い」「平野部」といった地形面での注釈付きで天気を伝えられることはよくある。実はそうした注釈もポイントで、天気を知りたいエリアが山沿いなのか、海沿いなのか、平野部なのかをあらかじめ把握しておけば、天気予報をサラッと聞き流すだけでも、ある程度の天候の予想がつく。●降水確率0%でも雨が降ることもある理由は? 続いてが“降水確率”について。今度は鈴木アナが説明してくれた。「降水確率に関しては、前提として一定時間内に1mm以上の雨が降る確率となります(今日・明日の天気予報の場合は6時間内)。イメージとしては、過去に同じような大気の状態が100あった場合に何回雨が降ったのかという数字です。例えば“今日午前の東京の降水確率は50%です”という場合は、“東京のどこかで6時から12時に1mm以上の雨が降る確率が、過去の同じような大気の状態においては100回中50回降りました”という意味になります。端数は四捨五入されるので、0%と天気予報で言っていても、数%は雨が降る可能性がありますし、1mm未満の雨が降る可能性は含まれていません。ちなみに、1mm以上という数字は、あまりピンとこないかもしれませんが、傘を差さなかった場合に服がしっとりと濡れるくらいの雨です」 “降水確率”は何となく理解しているつもりでいたが、話を聞いてみると意外と基本を知らなかったことに気付く。筆者も今までは、「降水確率0%だったのに雨降ったじゃん!」とブツブツと文句を言っていたクチだが、仕組みを知ると納得だ。