JCT-VCは,2010年にHEVCのひな形となるテスモデル(HM:HEVC Test Model)を策定してから,約3年をかけてHMの完成度向上を進めてきた。2012年7月にISO/IECのMPEGからHEVC国際規格草案が発行され,2013年1月に最終国際規格草案が発行された。今後,スケーラブル符号化や多視点符号化への拡張が行われる予定である。
HEVCは,携帯機器から高精細映像機器までの幅広い応 用機器を想定し,スーパーハイビジョン(Super HD)級の解像度まで対応している。また,フレームレートをスケーラブルに変更する時間スケーラビリティへの対応や,ランダムアクセス機能の拡張などが行われ,現行規格から機能的にも改良が図られている。技術の組合せを定義するプロファイルとして,当面は8ビット信号を扱うMainプロファイル,10ビット信号を扱うMain10プロファイル,及び8ビット信号の静止画像を扱うMain Still Pictureプロファイル,の三つが定められている。HEVCの処理構成は,H . 264/AVCと同様,動き補償予測と直交変換を用いたハイブリッド符号化を踏襲しており,個々の技術を高解像度向けに拡張する形で,圧縮効率の改善を実現している。大別すると,動き補償予測,画面内予測,直交変換・量子化,逆量子化・逆直交変換,ループフィルタ,及び可変長 符号化の六つの処理から成る(図1)。