NHKは13日、次世代のテレビジョン放送サービス「スーパーハイビジョン(SHV)」の実用化に向け、従来より低コストでコンパクトな実用的SHVプロジェクターを開発したことを発表した。 NHKでは「スーパーハイビジョン機器 研究・開発ロードマップ」を定めて、SHVカメラを始め、コーデック、伝送装置、記録装置、音響システム、ディスプレイなどの研究開発を進めている。今回、NHK、NHKエンジニアリングサービス、JVC・ケンウッド・ホールディングスが共同で、新開発の「e-Shift」デバイスを用いる方式のプロジェクターを開発した。「e-Shift」方式では、R、G、Bの3原色すべてにおいて画素ずらしを行う機能を追加し、SHVをフル解像度画質相当で表示することを可能とした。 画像シフト切り替え電気信号で、e-Shiftデバイスの屈折率を変化させ、光源(D-ILA表示素子など)からの光が進む道が変化することにより、1画素が斜め(縦・横)にシフト。屈折率を断続的に切り替えることで、一つの光源で2つの画素を表示する。画素のシフトにより、縦・横方向の解像度が実質的に2倍となるという。 従来は、SHV用プロジェクターである4Kデジタル・シネマ用に開発された800万画素の表示素子を用いてSHVの3300万画素相当の解像度を得る「デュアルグリーン方式」と、3300万画素の表示素子をR、G、B各1枚の計3枚用いて表示する2方式があった。デュアルグリーン方式は、既存の800万画素の素子を用いるため後者よりも安価に実現できるが、プロジェクター2台で構成するなど装置が大きいという問題点があった。後者は高画質だが、3300万画素の表示素子の製作には、高精度な技術が必要であり、低コスト化の実現が難しいという問題があった。今回新しく開発したプロジェクターは、これらの問題を解消して低コストでコンパクトなプロジェクターを実現している。 NHKは、2020年にSHVの試験放送を実現するため、ロードマップに沿って、より実用的なSHV機器の研究開発を進めていくとしている。