6日、都内で行われたNHKスペシャル『創られた“真実” ディープフェイクの時代』の出演者会見に、俳優の青木崇高と入山法子が登壇。AIやディープフェイクが日常に入り込む現代を描く本作について、技術に対する人間の付き合い方を語った。

同作は実際に起きた事件を題材に、進化するAI技術が生み出すリアルとフェイクが交錯する時代を描いたドラマ。青木が主人公・佐藤晃を、入山がディープフェイク技術によってコンピューター上に再現された妻・真奈美を演じる。



出演した感想を求められると、青木は「私が演じた“佐藤晃”という名前は、日本では多い名前なんじゃないかなと。やはりこのドラマは特別な家庭だけで起こる話ではなく、私たちのすぐ隣にある話なんだと実感しています。(役名も)どこにでも起こり得る話というイメージから名付けられたのかなと思います」と述べ、同作がリアリティを持った作品であることを強調した。
今回、“AIで作られたディープフェイク”という特殊な役を演じた入山。「AIに感情はあるのか?」「そもそも感情ってなんだろう?」ということを考えながら、役作りに挑んだという。その中で「もちろん人間らしさとは違うのですが、“(AIの自分を)作ってくれた人を助けたい”という思いから生まれた存在なのかな、と思いながら演じました。毎日難しいなと思いながら向き合ったので、皆さんにどのように伝わっているか楽しみです」と役への思い入れを語った。


フェイクとリアルの付き合い方について質問が及ぶと、青木は亡くなった真奈美(AI)の“姿”と初めて対面するシーンを思い出すという。最初に青木が同作のオファーを受けたとき、台本では多少否定的な感情が芽生えるように描かれていた。しかし、青木は「(実際に演じるときに)きっとここは、間違いなく喜びがあるんじゃないか」と思ったという。続けて「亡くなった大切な人の声を聞いたときは、(演じた晃と)同じように涙したと思いますし、そのグッとくる気持ちはどの時代でも同じだと思うんですよね。ずっと変わらないのは人間の心で、技術は変遷していく。だからどんな技術がやってきても人間の心をしっかりと持っていたい、と思いたいのが僕の意見ですね」と、技術と人間の心について語った。

リアルとフェイクが入り混じった時代を生きていくことになる若い世代に向けてのメッセージを聞かれると、青木は「(大人も巻き込まれる話なので)とても難しいですね……」と前置きしつつ、やはり「人と話すこと」が大切じゃないかと述べた。「ディープフェイク技術は素晴らしい技術ですが、良い面も悪い面もあります。だから、その技術をあまり悪意のある使い方をしないように、普段から思いやりを持つことが大切になるんじゃないかな」と思いを述べた。

会見の最後、青木は「付け加えると、実はドラマパート全部AIが作りました」と真顔でコメントし、会場がぴんと張り詰めたような雰囲気に。すると「……っていうのも数年後、本当にあり得る話なので。本当にわかんないですよね」とすぐに冗談だったことを明かした。続けて「本当にゾッとしますけど、映像制作も全部AIができちゃいますからね。それをさせるのもさせないのも、人間の判断次第じゃないかなと思います」と締めくくった。

NHKスペシャル『創られた“真実” ディープフェイクの時代』は、NHK総合で3月18日午後10時より放送予定。