NHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』。再放送を含め700回以上がオンエアされるが、まだ第1週目の放送が終了したばかり。ヒロインは有村架純。東京オリンピック開催となる1964年に茨城から集団就職で上京する女の子を演じる。 ここでは先月行われた会見のなかから、ドラマ『ひよっこ』のポイントや見どころについて制作統括・菓子浩氏のコメントを紹介する。--1964年を題材にしたドラマや映画は多いですが、この時代を知らない人にはどういう気持ちで観てもらいたいですか?朝ドラでは、この時代を扱ったものはあまりなくて、戦前戦後が多いんです。高度成長期の折り返しくらいが東京オリンピック。それをきっかけに東京の街も今のような姿に変わるし、どんどん経済的にも発展し先進国の仲間入りをします。一方で、ライフスタイルも変わっていって、核家族化が進んだり、農村から人がいなくなったりして廃れていきます。ある意味エポックな年だと思っています。別に歴史を知らせるために作ってるドラマではないんですけど、大事な変換点です。歴史に名は残ってないけど一人ひとり生き様があって今がある。企画の段階で、「そういうドラマを作りたいね」と脚本の岡田さん含めて話していました。だからヒロイン一人の話というよりは、それぞれにドラマがあるような朝ドラになっていると思います。--登場人物がよく歌を口ずさむシーンが登場しています1週目では「高校三年生」(舟木一夫)などが出てきたんですが、まだ皆でコーラスするシーンがあったりします。当時は、歌の力がすごく強い。皆で同じうたをうたって同じ気持ちになりました。「このドラマは1964年の話」と直接伝えるよりも、その時に流行っていた歌を入れることで、その時代を体験されていた方が「あれって俺が二十歳くらいの時の話だ」などと、すっとその気分を持ち込める効果があります。戦前の話ではないので、ヒロインのみね子でいえば今70歳くらいになります。その時代の空気を感じていただくしかけをたくさん作っていくことを考えています。(歌は)これからもたくさん出てきます。--オープニングの映像が印象的です。すべて昭和の道具ですか?時計が銀座、ラジオは工場、など相当苦労して集めています。これで60年代というか、みね子のゆるやかな物語を象徴するものを作っていきたいなと思っています。--増田明美さんはなぜ語り手に?マラソンの実況解説を見てて面白いと思ったからです。(増田さんの実況には)いらない情報とかがいっぱい入ってきたりするじゃないですか(笑)。レースよりも増田さんの解説を聞くほうが面白い。また、増田さんの声の魅力ですね。再放送をいれると780回も物語が流れるんですが、それだけ聞いていたい声です。個性はありつつ邪魔しなくて、すっと入ってくる声はなかなか難しいんですが、まさに増田さんの声が心地いい。「この時こう思ったのです」みたいなナレーションは止め、増田さんの解説によって主人公の自宅の食卓など些細なディテールを盛り込んでいきたいと考えています。--ヒロインのいきつく先はどうイメージですか一応ラフなプランはあるんですが、まだどうにでも変える余地はあります。今作りながらも面白いほう面白いほうに変わっているので、まだどんな結末にもできる感じではあります。ただ、結局最後まで家族と仲間たち以外は谷田部みね子を知らないだろうと思います。そういうところに懸命に生きた人ですね。ただ彼女なりの夢は叶えるはずです。--有村さんには何を期待してますか?有村さんは、もう今のままはいっていただければ、真摯に役に取り組んでいるので。みね子の役になりきろうとしているところがすごいと思います。