■「おたまはん」誕生のきっかけ おたまはん誕生のきっかけは、取引先の鶏卵業者の悩みだった。「卵は物価の優等生と言われ、ずっと価格が変わらないし、なかなか経営も大変だ。1個50円、100円という高価な卵が市場にでてきても、なかなかとぶようには売れない」。その鶏卵業者の悩みを聞いた営業マンは、卵とセットにして売れる商品を考えようと思い立った。 おたまはんは、従来の商品とはまったく異なる商品だった。餅であれ焼肉のタレであれ、それまでの同社の商品は工夫を凝らして売れてはいたが、市場にすでに存在している商品であり、その延長にすぎなかった。おたまはんはこの流れをガラリと変え、よそが販売していないものを初めて作った商品となった。この試みは会社にとっても新しいことだった。 なお、卵が売れる商品ということを考えた場合、「オムレツ」をはじめその他の卵料理を考えがちだ。何故、たまごかけご飯専門の醤油か?ということについては、明確にこれだというのはないが、「身近でお手軽」というのがあったかもしれないと話す。「こういう地域に住んでいると、昔はほとんどの家で鶏を飼っていて、朝生んだ卵でご飯を食べていた。(商品を思いついたのは)そういうこともあったと思います」(高岡氏)。しかし、何も専用の醤油である必要はなかったはず。むしろ普通の醤油をかけて食べるケースが多いのではないかとさえ思う。当然社内でも同じ見解はあった。しかし、そのなかに、「鰹節と醤油をかけて食べるとおいしい」という意見もあり、「だったら専用の醤油を作ったらどうか」という意見が挙がっていったという。醤油の質を考えた場合、同社には美味しい醤油の存在があったということも有利に働いた。すでに販売していた焼肉のタレも醤油ベースのものだが、その醤油は同社のためにわざわざ醸造してもらっている商品だった。安心安全をかかげ、添加物を使わないという考えのもと採用していた醤油だ。 「商品開発は面白く、皆わいわいやりながら作っていった」と高岡氏は振り返る。決して専門家に頼んだのではなく、とにかく作っては食べ作っては食べを繰り返した。基本は、きっとダシ醤油だが何のダシを使って合わせるのか、これまでのお手本がない分苦労した。昆布、椎茸、鰹……試行錯誤のなかで鰹のダシにいきついた。卵の生臭さをなくす上でも役立ったという。 ただ、すぐには販売という結論には至らなかった。同社の商品の販売量を見た場合、都市部が多く、全体の3割は関東が占める。「東京で売れないとダメ」という鉄則があったが、首都圏の主婦モニターを使って調査をした結果、購入してもいいという人は半分以下だった。同社では何故かと考えたが、原因は醤油の嗜好の違いだった。結果、関西風、関東風に2種類を作り、販売をはじめた。