■ランサーズを必要とする人がいた 起業して2年間、まったく先が見えない状況が続いた。「時間と場所にとらわれない働き方を作る」というビジョンを掲げ、クラウドソーシングサービス「ランサーズ」を立ち上げたものの、利用者数は伸びない。正直、やめようと思ったこともあった。それでも踏ん張れたのは、「ランサーズ」上で生活している人、「ランサーズ」を必要としている人がいたからだった。特に、ある寝具メーカーとデザイナーの存在が大きかったと代表取締役の秋好陽介氏は言う。「実際にランサーズに依存してくれている人や企業が出始めたんです。これならいける、と思いました」。 当時20代後半だったそのデザイナーは、もともとサラリーマンをしていた。しかし、人と会うことにストレスを感じていたという。「人と話すのが苦手で、僕も会ったことがあるんですが本人は豆腐の(ようにもろい)ハートだと言っていました(笑い)。僕と会うというだけで相当緊張していましたね。そんな人が、ランサーズを見つけて『これだ』と感じてくれた。ランサーズなら自分はストレスフリーで働けると、すぐに登録してくれたそうです」(秋好氏)。 結局そのデザイナーは当時年間500~600万円をランサーズ上で稼ぐほどになる。ランサーズで仕事をするとオンラインで評価が貯まるため、企業からの信頼を得れば次々と発注が舞い込んでくる。また、その寝具メーカーもランサーズを信頼し、枕やベッドカバーなど自社製品のデザインの8割をランサーズを通して作成していたという。