「C&Cユーザーフォーラム & iEXPO2010」会場のクラウド関連ブースでは、日本電気(以下、NEC)がサポートするさまざまな企業向けクラウドサービスが紹介されていた。NECでは、主にイントラネット環境内でサービスを占有するプライベートクラウドの提供に注力している。業種別には、公共・医療・教育、金融、メディア、製造・装置、流通・サービスといった各種アプリケーションサービスが用意されている。 もともと同社では海外を含む12万人のグループ企業を対象に改革を推進し、グローバルな大規模社内クラウドを実現してきたという経緯がある。IT関連のコストは、主にITインフラコスト、業務アプリケーションソフト、業務プロセスコストといったものがあるが、どうしてもITインフラや業務アプリケーションソフトのコストに目が行きがちだ。しかし、抜本的な改革をするには、業務プロセスにも目を向けなければ意味がない。そこで同社では、まず経理/販売/購買の業務プロセスやルールを標準化し、統合することで全社的な集中管理体制を構築した。 こうした改革の経験を元に商品化したのが「クラウド指向経理サービス」だ。このサービスでは、SAPのグローバルな経理システム環境をNECのクラウド上で提供するもので、業務プロセス改革と標準システム構築を推進することによって、経営のスピードアップや、グループ連結決算の早期化や、内部統制の強化、IFRS対応(国際会計基準)への基礎作りに貢献できるという。 大企業向けのクラウドサービスばかりでなく、中堅・中小企業に適したSaaS型ソリューションも数多く紹介されていた。同社が提供するサービスには、フロントオフィス用途から、共通ツール、基幹業務・周辺業務、コンサルティングサービス、ネットワークセキュリティ、シンクライアント、SaaS基盤まで、約50種類のサービスメニューがある。 その一例となるフロントオフィスソリューションでは、クラウドで使うグループウェア「わくわくオフィス」を展示。一方、基幹業務ソリューションでは、中堅・中小企業に実績があるERPパッケージのSaaS対応版「EXPLANNER for SaaS」「GRANDIT-ASP.SaaS」のほか、お馴染みの「奉行iシリーズ」「大臣iシリーズ」のSaaS対応版などもあった。 いわゆる「業界クラウド」と呼ばれるサービスの事例もいくつか紹介されていた。これは特定ベンダーがサービスを提供するだけでなく、業界の中で幅広くクラウドを活用できるという特徴をもつ。たとえば住宅関連事業者向け業務クラウドサービス「JHOP」では、住宅業に関わるCADベンダーや業務システムベンダーが商品・サービスを提供し、住宅関連事業者(一般工務店や部材工場など)が、そのオンデマンド型サービスを利用できるというモデルだ。展示では、受注支援のプロセスとして「JHOP CAD」や「バーチャル展示場」といったサービスのデモが行われていた。 またホテル基幹業務パッケージ「NEHOPS」をSaaS化したホテル総合サービスも目を引いた。宿泊・宴会・売上分析・会計などの業務を容易にクラウドサービスへ移行できるもので、ホテルごとに個別導入していたシステムを統一し、グループ共通の環境を実現。このサービスがユニークな点は、単なるアプリケーションのSaaS提供にとどまらない点だろう。実際のデモ展示ではホテルIP電話システム(UNIVERGE)や、電子看板を使ったデジタルサイネージサービス(PanelDirector)を連携させた例を紹介していた。 このほかにクラウドサービスを利用する側の視点だけでなく、管理者側の実運用を助けるソリューションもあった。従来の統合運用管理ソフトウェア「WebSAM Ver.8」から、データセンターのクラウド環境で運用管理に必要な機能をチョイスし、強化してまとめた「WebSAM DC運用パック」がそれだ。ダイナミックに構成が変化するクラウド環境を可視化し、運用を自動化することで、コストの最適化が図れるという。出展ブースでは、論理・物理構成の自動マッピングの様子など、WebSAM DC運用パックの特徴となる機能について、いくつかデモが行われていた。
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