NECが開発したウェアラブルコンピュータ(身につけて使用するコンピュータ)による業務支援システムは、メガネ型ディスプレイと小型端末、そしてウェアラブルコンピュータにコンテンツを配信したりサービスを提供するサーバから構成される。「C&Cユーザーフォーラム & iEXPO 2009」では、このシステムが体験できる。 会場のデモは自動翻訳システムとの連動で、英語の翻訳がメガネ型ディスプレイに表示され会話ができるというものだ。実際の応用では、フィールド作業時にサービスマニュアルや指示書、図面などをディスプレイに表示させながら作業ができるといったものや、遠エキスパートの指示に従い、専門的な操作や作業を隔操作的に行うことなどが想定されるという。 メガネ型ディスプレイならこれまでも多数の製品があり、自動翻訳などもそれほど珍しくはないが、この業務支援システム「Tele Scouter」は、サーバと連携する端末と、ブラザー工業が開発した網膜走査型ディスプレイの組合せが特徴となっている。サーバ連携は、さきほど述べたような業務用途を広げることが可能になり、網膜走査型ディスプレイは、視点を移動させずに画像が自然に見えるので、利用者のストレスが非常に少ないとのことだ。 網膜走査とは、レーザー光による走査線の映像を直接網膜に投影する方式のディスプレイだ。TVの画面は走査線という画面の横方向の映像信号(デジタル画像ならドット)を何本も重ねて1枚の画像を表示させている。これと同じことを網膜に直接行うというものだ。レーザーは超低出力なので人体への影響はない(液晶画面を見るのと同じくらいの影響という臨床データを得ているという)。 メガネについている透明なアクリル板に映像が表示されるわけではないので、ユーザーはそこに視点をあわせなくても映像を認識できる。同時に通常の視界との違和感も少ない。ディスプレイの情報も外の景色と同じように見える感覚だろうか。 ところで、システム全体はNECが開発しているが、ディスプレイはブラザー工業製だ。なぜブラザー工業なのかというと、走査線で絵を描くというのは、実はインクジェットプリンタなどと同じ原理でもある。ブラザー工業の担当者によれば、これにはプリンタの技術が生きているという。この網膜走査型ディスプレイの解像度は800×600のSVGAモードに対応し、フレームレートは60。動画も問題なく再生できるという。