フジテレビは27日、タレントの中居正広氏と女性とのトラブルをめぐり臨時取締役会を開催し、一連の問題への責任を取り港浩一社長と嘉納修治会長の辞任を決定した。同日午後4時から開かれた記者会見は、休憩をはさみながら日付が変わっても翌深夜2時23分まで続き、10時間を超える異例の長時間会見となった。会見会場には400名ほどの報道陣・関係者が詰めかけ、注目度の高さがうかがえた。記者会見には、辞任する港社長と嘉納会長、新社長に就任予定の清水賢治氏、フジ・メディア・ホールディングスの金光修社長、そしてフジテレビ遠藤龍之介 副会長が登壇。一連の経緯や対応の不備などについて、質疑応答を行った。
会見で嘉納氏は、「人権に対する意識の不足から十分なケアができなかった当事者の女性におわびしたい。視聴者や広告主、出演者など多くの方々にご心配やご迷惑をおかけした」と陳謝。一連の騒動でフジテレビが社会的信用を損なった責任は経営トップにあるとし、辞任を表明した。
清水新社長は、編成や経営企画など多面的な経験を持ち「オールラウンドで今の状況にふさわしい」として後任に選ばれた。清水氏は「報道されている事案で女性への配慮を欠いたことを深くおわびする。視聴者や広告主の信頼を失っている現状を重く受け止め、再発防止策の徹底と企業風土の刷新に取り組む」と強調した。
今回のトラブルは、中居氏と女性の間に起きた問題にフジテレビ社員が関与していたのではと一部週刊誌が報じたことが発端とされる。
フジテレビ側は当該事案を「人権侵害が行われた可能性がある」と認識していたが、当事者女性が「公にせず、知られずに仕事へ復帰したい」と強く希望し、女性の心身状態を最優先に考えた結果、社内での情報共有が限定的になり、対応が遅れてしまったという。
港氏は「自分のところに報告が正式に上がったのは2か月後だった。プライベートなトラブルとの認識があり、センシティブな問題として慎重に扱った結果、ガバナンス上の問題を生んでしまった」と深く反省の意を示した。また、「番組対応についても女性への刺激を懸念したが、振り返ると対応が後手に回った」と述べている。
トラブルが報じられたあとも、中居氏出演の番組は1年以上放送が続いた。フジテレビ側は「唐突に終了すると臆測を呼ぶ」「女性への刺激を避ける」などの理由から番組中止を控えたと説明。
しかし、2024年1月に出演者の松本人志氏が活動休止を発表しても番組終了に踏み切らなかった点について、「番組継続が適切だったか、第三者委員会の調査に委ねる」としている。
フジテレビの取締役相談役であり、長年経営トップを務めてきた日枝久氏が会見に出席しなかったことに対して、多くの質問が集中した。 遠藤氏は「日枝氏は現場の編成や制作を直接統括する立場ではなく、今回の責任は現経営陣が負うべき」と説明。金光氏も「日枝氏の影響力は大きいが、直接の関与がない以上、会見登壇の必然性はない。とはいえ、企業風土の礎をつくってきた人物として、遠因を含めて第三者委員会が調査する」と述べた。
また、「取締役全員が責任を取るべき」という指摘に対して、嘉納氏は「全員がすぐ辞めたら業務が止まる。必要な役割を終えた段階で、各自が責任を取る場面が来る」との方針を示している。
フジテレビでは以前から「セクションの打ち上げに女性アナウンサーが同席する」など“緩い体質”があったことを、幹部陣も認めている。港社長は「昔の雰囲気を今も引きずってしまっている」とし、優越的地位による誘いが時代錯誤だと強調。嘉納氏も「フジテレビの常識は世間の非常識だった面がある」と反省を口にした。 コンプライアンス推進室など社内組織との連携も不十分で、結果として情報共有が限定されてしまった。今後は第三者委員会が調査を行い、その報告を踏まえ全役員体制を再検討する見込みである。
トラブルを受けてスポンサーがCM出稿を控える動きが広がり、4月以降のセールス交渉が事実上止まっていると清水氏は言及した。CM差し止めが業績にどう影響するかは「現段階では精査中」としつつ、「根本的には視聴者との信頼関係を取り戻すことが最優先」と述べている。 また、遠藤副会長はフジテレビが運営に携わるイベントやトリエンナーレも「予定どおりは難しい」と語った。