「宇宙の町」をPR!クラウドファンディングで2,800万円の寄付が集まった
肝付町、チェンジ社、トラストバンク社の座組みで進められている本プロジェクト。きっかけは、トンネルの点検技術者、飛行機の整備士などに向けて教育用のAR / VR技術を提供しているチェンジ 代表取締役の福留大士氏がJAXAを訪れたことに始まる。たまたま見かけた売店の看板に、出身地にほど近い肝付町の広告が載っていたという。「イプシロンを打ち上げた故郷は、ICTの活用にも積極的だと聞いていた。そこで何か面白い取り組みができないかと、肝付町の永野和行町長に話をもちかけたんです」(福留氏)。町では『宇宙の町』をPRしたい意向があった。ほどなくして両者は、話題性のあるVRで何か面白い取り組みができないか、具体的な検討段階に入った。
しかし、VRコンテンツの制作にはコストがかかる。町に財政負担のない形を模索するなかで、福留氏が注目したのがトラストバンクの提供する、ふるさと納税を活用したクラウドファンディング「ガバメントクラウドファンディング」だった。これは自治体がプロジェクトオーナーとなり、クラウドファンディング型で広く資金を調達する仕組み。寄附者は自らの意思で寄附金の使い道を選ぶことができる。トラストバンク 代表取締役の須永珠代氏もこの申し出に快諾。昨年12月に実施したプロジェクトには、総額2800万円超の寄附金が集まっている。
宇宙空間を疑似体験できるVRコンテンツが完成
果たして制作されたのは、まるで無重力空間の宇宙に漂っているかのような疑似体験ができるVRコンテンツだった。「宇宙の広さ」や「光の速さ」を身をもって体験できるのが特徴。今後は、公営の美術館に所蔵されている美術品がVRコンテンツの中に追加されていく予定もあり、そのため本事業は”VR宇宙美術館の建設プロジェクト”とも銘打っている。
永野町長は「宇宙=肝付町というイメージを、日本だけでなく世界にも広げていきたい。制作されたVRのバーチャル映像には、とてもワクワクさせられた。次の100年に向けて、子どもたちの教育などに活用していければ」と期待感を口にする。また、トラストバンクの須永氏は「宇宙の町として発信しようという試みに、納税者の方たちから賛同が集まった。「夢がある」「子どもが宇宙を感じられる良いプロジェクト」との反響がある。これまで自治体では、人を呼ぶコンテンツをハードが担う、いわゆる『ハコモノ行政』がおこなわれてきた。しかし今回の取り組みは、ソフトで地域活性化をはかるもの。ハードからソフトへの転換になる」とアピールした。
期間限定、有楽町でも体験できる
本VRコンテンツは、基本的には肝付町でのみ体験できるものにしたい考え。しかしプロモーションのため、YouTubeを含めて、いくつかの方法で(機能を限定するなどして)提供していく。なお、4月24日から29日まで、期間限定で「ふるさとチョイスCafe」(東京都千代田区有楽町1丁目12-1新有楽町ビル地下1階)でも体験が可能だ。もともと「肝付町でのみ提供されるVRコンテンツ」として開発されたものだけに、今回は貴重な機会となっている。
福留氏は「それらを通じてコンテンツに興味をもってもらい、本格的な体験をするために肝付町を訪れてもらえれば」と説明する。なんとか故郷に恩返しをしたかった、これからも地元を盛り上げていきたい、と笑顔で話す福留氏だった。