そんな状況のなか、新しいスタイルのスポーツ観戦やイベントの開催も広がりつつある。横浜DeNAベイスターズとKDDIが11日に実施したVR空間内で野球観戦を楽しめるイベント「バーチャルハマスタ」を体験した。

この日、横浜スタジアムではDeNA対阪神戦が行われた。バーチャルハマスタは、この実際の試合に連動するかたちでバーチャル空間上にもうひとつの「横浜スタジアム」をつくって観戦を楽しむもので、VR空間でのイベントの開催・参加ができるバーチャルSNS「cluster」を使って実施された。VRデバイスがなくてもPCやスマホの専用アプリから利用できる。著者が所有しているVRヘッドセットの「Oculus Quest」は現状ではclusterに対応していないため、今回はPCから参加してみた。
開催時間になると、clusterのサイトのイベントページに入場ボタンが表示されるようになる。あらかじめアプリをインストールしたうえで、このボタンをクリックするとアプリが起動し、アバターの選択画面へ。clusterのVR空間内では自分の姿がアバターで表示され、標準ではロボット型のシンプルなものを使う仕様となっているが、今回はイベント限定の特典として同チームのユニフォーム姿のアバターが用意されていた。

イベント会場に入ると、まず、横浜スタジアムのリアル外観が目の前に現れる。PCならキーボード操作、スマホなら画面上の仮想パッドを使って前後左右に移動でき、視点の移動やジャンプなどの動きも可能だ。


スタジアム入り口の階段を上るとコンコースに入ることができ、実際に歩き回ることが可能。横浜スタジアム公式サイトのフロアマップと見比べると、かなり忠実に再現されていることがわかる。


続いてゲートから球場内へ。オープニングセレモニーの後、中央に巨大なビジョンが出現。TV中継に比べると多少の遅延はあるものの、試合中継の映像がほぼリアルタイムで流れ、パブリックビューイングのように視聴できる。さらに、実際のハマスタに設置されているものと同様のスコアボードも再現され、実際の試合経過に応じたデータがリアルタムで表示される。



会場内ではイベント限定の生解説を音声で聞くことができる。また、clusterには参加者が自由に書き込めるコメント欄が用意されているので、ここに試合の感想などを書き込んで他の参加者と交流したり、解説者に質問したりが可能だ。

また、より簡単に意思表示のできる機能として「エモーション」ボタンも用意されている。画面に表示されるボタンから種類を選ぶことで、拍手やサイリウム、ハートマークなどを自分のアバターの上に表示できる。

参加者同士だけでなく、ゲストと参加者が交流できるのもバーチャルイベントならでは。今回のイベントでは、途中、解説を担当する球団OB・荒波翔がアバター姿で会場内に登場。解説音声で伝えられる「現在地」のヒントを頼りに参加者がアバターを探し出し、一緒に写真(スクリーンショット)を撮る場面もあった。

この日、DeNAからは2本のホームランが出たが、ここでもバーチャルならではの演出が。ホームランの瞬間、球場が暗転し「HOME RUN」の巨大な文字と花火が出現! また、ヒットやアウトのときもビジョンの周囲に「HIT!」「OUT!」の文字が現れるなどの演出があり、観戦の気分を盛り上げてくれた。

そのほかに、球場内には台座部分に同チーム選手のプロフィールなどが記載された巨大なボードや、球団マスコット「スターマン」のモニュメントも設置されていた。なお、ボードの台座部分は、アバターで登ることができるので、高い位置から球場を眺めることも可能だ。


試合は2-9と阪神に大差をつけられての負けという残念な結果に終わったものの、コメント欄にはファンからの「楽しかった」「明日は絶対勝つ!」といった前向きなコメントが多数投稿されていた。なお、試合に勝った場合の特別な演出も用意されていた模様。今後のバーチャルハマスタの実施予定などはまだ明らかになっていないが、今回は披露されなかった演出を見られる機会にも期待したい。
VR空間内で中継を楽しむ今回のイベントは、従来の視聴形式でいえば、パブリックビューイングやTV中継を見ながらSNSに感想を投稿する感覚に近いが、バーチャルなスタジアムという「空間」が存在することで、それらにはない臨場感・ワクワク感を得られる点が魅力だと感じた。
実在する場所を忠実に再現し、その場所で実際に行われているイベントをリアルタイムで一緒に楽しむというスタイルは、スポーツ以外にもさまざまな分野のイベントに活用できそうだ。