■アプリで簡単、クルマの維持費削減に
Anycaは、スマートなカーシェアライフを実現する個人間カーシェアサービス。DeNAは、同プラットフォーム上で「クルマを所有しているオーナー」と「クルマを運転したいドライバー」を安心・安全に結びつける取り組みを進めている。クルマの登録、予約、受け渡し、料金の受け取りなどが、スマートフォンのアプリ上で簡単におこなえる設計だ。同社 事業担当者の馬場光氏が詳細を説明した。

Anycaを開始したきっかけについて、馬場氏は「国内には約6000万台のクルマが登録されていますが、その稼働率は5%程度とも言われています。つまり95%のクルマは駐車場に眠ったまま。一方でレンタカーは車種が限られていますし、乗りたいクルマには金銭的にもなかなか手が届かない状況にあります。そこで、色んなクルマに気軽に乗れるサービスを考えました」と説明する。サービスはiOS / Android向けに提供するアプリを通じて利用できる。展開エリアは全国で、内訳は4割が東京、4割が地方の大都市、2割がその他のエリア。現在の登録会員数は10万人以上、登録されているクルマは600車種(3500台以上)となっている。

試しに「クルマ検索」してみると分かるが、ベンツ、ポルシェ、ジャガー、ボルボ、キャデラック、テスラなど、そうそうたるクルマが揃っている。多くは1日借りても1万円程度。憧れの車種に、リーズナブルに乗れるのが人気の秘密と言えそうだ。もちろん高級車だけでなく、国産車を生活の足として、あるいは家族サービスのために借りる人も多いとのこと。「ファミリー利用なら24時間で3000~5000円ほどです。例えばトヨタのヴィッツなら、レンタカーで7000円くらいはしますが、Anycaなら3000円くらいで24時間借りられます。レンタカーと比較すると4~5割安くなっています」(馬場氏)。なお利用料金はオーナーが自由に決めることができるシステムで、安いもので500円、高いものでウン万円とその幅は非常に広い。料金の90%はオーナーに、10%は手数料としてDeNAに入るしくみだ。

実際、オーナーはどのくらい儲かるものなのだろうか。馬場氏は「ひと月あたりの平均受取金額は、車1台あた2万5000円です」と明かした。しかしクルマの購入費、維持費を元にレンタル料金の上限は決められており、このためオーナーが”お金儲けのためだけに”利用できない制度になっているという。「基本的に、駐車場などにかかるクルマの維持費を削減できる、生活費を助けるという認識で利用していただいております」と馬場氏。
■安心・安全に向けた取り組み
こうしたサービスには、利用者の安心・安全を守る取り組みが欠かせない。Anycaでは会員に免許証、社員証などの提示を義務付けている。また保険会社(東京海上日動)と連携しており、「1日自動車保険」に自動加入するしくみ。利用者のトラブルには、カスタマーサポートが24時間体制で対応する。万が一、事故が起こった場合にも、提携している修理工場と連携して傷の確認、適切な見積もり、スムーズな決済がおこなえる。アプリ上では傷の確認ツールの利用も可能だ。サービスの利用後にはオーナーとドライバーの双方が、お互いをレビューしてWeb公開する形をとっている。

■口コミで市場の拡大を
プロモーション方法にもこだわりがある。サービス開始当初は広告を打っていたが、オーナー向け説明会の参加者の登録率・継続率が高いことに注目し、口コミ経由でオーナーを獲得する体制に転換した。この結果、広告の停止後も利用者の数が増え続けているという。現在はユーザーのコミュニティ作りを重要視しており、クルマ撮影会やユーザー交流イベントも頻繁におこなっている。「デロリアンの試乗イベント、新旧ポルシェの乗り比べなど、クルマ好きの方に訴求できるイベントをやっています。回数としては、この2年間で200回以上。4000人以上の方に参加いただきました」と馬場氏。
過去のユニークな利用事例について聞いた。「クルマの受け渡しに際して手紙が添えてあったり、お土産を持参したりと、ユーザーさん同士のコミュニケーションで心が温まったという話を多く聞いています。また結婚式の日にオープンカーを借りた、というカップルもいらっしゃいました。あとは父が若い頃に乗っていたクラシックカーを借りて、父の日に一緒にドライブに行ったという事例も」(馬場氏)。こうしたユーザー体験は、Anycaならではのものと言える。こうした付加価値が、従来のレンタカーサービスとの差別化にもつながっているようだ。
しかし国内におけるカーシェアリングサービスは、まだ始まったばかり。馬場氏は「利用者の不安を取り除くためにDeNAがAnycaの安全性を訴えてもバイアスがかかり、伝えられるものは限られてしまう。コアなユーザー様を中心に口コミで広がり、コミュニティとともに市場が拡大していくイメージを抱いています」と説明していた。なおAnycaでは今後の取り組みとして、スマートキーや顔認証などの機能を利用して、よりスムーズにクルマを受け渡しできる環境を整えていくとのことだった。
※駐車場シェアサービスのakippaとは?