クルマ側から見た今年のCESは、自動運転実現への主導権が、Googleやアップルから自動車メーカーの手に戻り、現実的な課題解決を提案する展示が目立っていた。これまで完全自動運転、つまり”無人運転”を標榜して憚らず、圧倒的なソフトウェア開発力を背景に、自動運転を強力に推し進めてきたGoogleが、今回のCESを前に一歩引く形となったからだ。一足飛びに無人運転を目指すGoogleに対抗して浮足立っていた自動車業界が、この発表によって落ち着きを取り戻したかのように、今回のCESにおいては、まずは次の「レベル3」を実現するための現実的な課題を解決するという”地に足の着いた”提案が見られた。前置きが長くなったが、そこで今回浮き彫りになった課題とは、「AIから人間に、運転主体をきちんと引き渡すこと」の難しさだ。自動運転のレベル3とは、「基本的には自動運転だが、必要に応じて人間が運転をする」と定義されている。つまり、AIが運転できないほどの緊急時には、人間が運転を代わる必要があるのだ。人間からすると、どんな時でも運転が代われるように準備しておいて、いざという時にはハンドルを握らなくてはいけない。でもそれは無理な相談だろう。普段やることがなければ、人間ボーっとするか、ほかのことに手を出すのがオチだ。しかしそんな時でも、きちんと人間に運転を引き渡すための「生体認識」の技術を展示していたサプライヤーが非常に目立った。私が見たところだけでも、ボッシュ、ZF、コンチネンタル、日立オートモティブシステムズ&クラリオン、Gentex、NVIDIA。いずれも錚々たるメガサプライヤーの面々だ。生体認識の方法は様々だが、いずれもレベル3における上記の課題を解決するための提案であった。人間の様子を認知したうえで、注意喚起のためにブザーや表示などで警告をするケースもあれば、例えばトヨタのコンセプトカー「コンセプト-愛i」のように、AIが友達のように振舞い、人間の様子を見ながら掛ける曲を提案したり、人間の感情が高ぶっていると見れば自ら運転を名乗り出たり、といった、生体認識およびコミュニケーションに対するトヨタなりの回答も見られた。いずれにせよ、生体認識はレベル3には必須条件であり、現実的な提案も数多く見られた。遠くない未来に、当たり前のようにクルマに搭載されていくことになるだろう。