世界的な旅行ガイドブック「ロンリープラネット」に、こんな一文があるという。“日本ではカードに頼るのは得策ではない”。つまり、日本ではいまだに現金決済が主流であると、多くの外国人観光客に思われているのだ。 「なら、うちはカードを入れているから大丈夫だろう」と思う店もあるかもしれない。だが、それが実は間違っていると警鐘を鳴らしているのが、ビザ・ワールドワイド・ジャパンの龍武史氏だ。 流通システムの総合展示会「リテールテックJAPAN」で行われたセミナーで、同氏はアクセプタンスマークの重要性について訴えている。今後インバウンド対策を考えている小売店などは、一刻も早くクレジットカードに対応し、その上でマークを適切な形で掲示すべきだろう。■国内店舗の92%がカード非対応……に見えるカラクリ 龍氏によるとクレジットカードの意義は3つあるという。すなわちポイントプログラムによる満足度向上のサポート、行列緩和などに向けた会計スピード向上、機会損失の削減。このうち、機会損失の削減では、現金を持たない利用者でも後払いできるメリットが強調され続けてきた。 しかし、これからの時代にカード対応といえば、真っ先に思いつくのがインバウンド対策だ。そこで登場するのがアクセプタンスマーク。VisaやMasterCardなど各カード会社のロゴを象ったもので、これをレジや入口に掲示することで、その店がカード決済に対応することを表している。 だが、ビザ・ワールドワイド・ジャパンが独自に実施した調査によると、その掲示状況はかんばしくない。東京、京都、那覇の飲食店750店舗のうち、クレジットカードに対応していたのは65%。その中でマークを貼っている店舗は27%。それも店頭に貼っていない店舗が56%を占めている。 これが“日本ではカードに頼るのは得策ではない”と言われる大きな原因だと龍氏は話す。店の前にたどり着いても、カードが使えると分かる店舗は全体の8%。その一方で、外国人観光客のマークへの関心は非常に高い。・アクセプタンスマークのあるお店を好む……83%・頻繁にアクセプタンスマークを探す……54%・カードが使えない場合、利用金額に慎重になる……64% 増え続ける外国人観光客を店の前で足踏みさせないためにも、まずはクレジットカードに対応すること。その上で、マークは必ず店の入り口に掲示しておきたい。■外国人観光客と若年層の需要にダブルで対応 クレジットカードの普及が進む中で、それに続く電子決済の手段として見逃せないのがプリペイドカードだ。中でも、最近よく目にするようになったのが、VisaやMasterCardなどと提携している、いわゆる“ブランドプリカ”。クレジット決済端末がある店であれば、どこでもチャージ金額を利用して支払いができる。 ビザ・ワールドワイド・ジャパンの金子匡氏によると、プリペイドカードの利用者は増加傾向にあるという。昨年比では14年には56%増、15年には83%増と、その成長率も著しい。「プリペイドカードには年齢制限や与信審査がありません。クレジットカードは嫌だが、プリペイドカードなら利用したいという人もいるようです。このため、最近ではユーザーのロイヤリティを高める目的などから、主にスーパーなどの小売店で発行されています」 近年ではトラベラーズチェックが無くなり、プリペイドカードへと姿を変えた。その一方で、スマホでモノを買うのが当たり前の時代となり、電子決済は若者を中心に利用を増やしている。外国人観光客だけでなく、若年層にとっても今やカード決済は身近なもの。小売店や飲食店には、その対応が急ぎ求められている。