10月5日、ついにスタートしたマイナンバー制度。同月中旬からは、全国各地でマイナンバー通知カードの配達が開始されるなど、国民の手に渡りはじめている。 ただ、マイナンバー制度に関する具体的な内容への理解や認識については、まだまだ浸透していないのも事実だ。そこで本コラムでは、制度に詳しい専門家が素朴な疑問に対して回答。今回は、公認会計士・税理士の森滋昭氏が解説する。[質問]・株主からマイナンバー取得の必要はあるのか?[回答&解説] マイナンバー制度導入後、従業員からマイナンバーを取得しますが、実は、会社の個人株主からも、マイナンバーを取得する必要があります。 会社が配当をすると、支払調書を税務署に提出しますが、この支払調書に株主のマイナンバーを記載する必要があるためです。 ただし、株主の場合は、支払調書の提出時期や、マイナンバーの記載要件など、さまざまな点で従業員とは異なるため、具体的なポイントを見ていきましょう。■配当について まず、はじめに、一般的な株式配当の流れを確認します。(1)配当の決議決算期末後に、定時株主総会で配当の決議を行います。(2)配当の支払い株主総会の配当決議を受けて、株主に送金し配当を行います。(3)支払調書の提出 支払確定日(または支払った日)から1ヶ月以内に、支払調書と支払調書合計表を、税務署に提出します。ただし、年1回の支払いで、配当金額が10万円以下の場合、支払調書の提出は省略できます(正確には、「配当金額 ≦ 10万円 × 配当の計算期間の月数 / 12」の場合に提出不要)。(4)納付 配当の支払時に源泉徴収をした源泉所得税を、支払った月の翌月10日までに納付します。決算期末後の定時株主総会での配当を例にしましたが、期の途中でも中間配当のように配当することができます。今回、マイナンバー制度の導入により、2016年1月以降に支払った配当については、支払調書に個人株主のマイナンバーを記載しなければなりません。■どのようにマイナンバーを取得し、いつから記載するか 個人株主からのマイナンバーの取得と、支払調書への記載時期は、ケースに応じて変わってきます。(1)マイナンバーの取得方法 通常、従業員のマイナンバーは会社が直接本人に依頼をして入手します。しかし、上場会社などは、会社の代わりに証券保管振替機構や株式名簿管理人がマイナンバーを取得します。 この「証券保管振替機構」(通称、「保振(ほふり)」といいます)とは、株式等振替制度という制度により、上場企業の株式の売買を管理する特別な機関です。マイナンバーは、証券会社を通じて証券保管振替機構が入手します。 また、通常は信託会社などが「株主名簿管理人」として、株主名簿の管理や株主に関するその他の事務を取り扱います。非上場企業であっても、株主が多数いる会社の場合、株主名簿管理人に事務を委託していることがあります。これら証券保管振替機構や株主名簿管理人がいる場合には、・マイナンバーの取得と保管・税務署への支払調書の提出を、会社に代わって行います。