■技適問題に結論が出なかった2014年 前述の格安SIMでスマートフォンを使うケースで言えば、ある程度端末入手のノウハウを持つユーザーであれば、海外でお気に入りの端末を購入してきたり、海外の通販サイトを通じて端末を入手し、日本で使うというシチュエーションも考えられる。ところが、こうしたケースでは、日本における技術基準適合証明(いわゆる「技適」)がないと、違法無線局になってしまう。 一方で、2020年に東京オリンピックの開催が決まり、来日外国人観光客のモバイル利用をどうするかという課題も出てきた。このため、国としては来日観光客向けに積極的に無料で利用できるWi-Fiスポットを整備していくことや、来日観光客が利用する端末に技適が無い場合にどういう扱いにするかの議論が始まった。すでにWi-Fiの整備は自治体によっては先行して進めているところもあり、技適が無いと思われる端末をフリーWi-Fiスポットで利用している観光客の姿もよく見かけるようになった。 Wi-Fiの整備や、来日観光客向けにMVNOのプリペイドSIMを販売する試みなどはスタートしているが、この技適を巡る法規制の緩和に関しては、来年以降に持越しである。このあたりの課題がきちんと解決されていくと、来日観光客に限らず、海外で販売されるスマートフォン等の並行輸入などの新たなビジネス市場の創出にもつながり、MVNOの利用にもさらに弾みがついていくことになろう。 本連載第48~50回でもご紹介したが、たとえば米Googleが米国で販売した眼鏡型ウェアラブル端末「Google Glass」も、言ってみれば技適がない(実際には申請と取得はされているが端末上に表示されない)ため、合法的には国内で電源を入れることができない。このため、連載中で合法的にレビューを行うためにわざわざ韓国へ渡航してきた。韓国も日本同様に電波の扱いや端末の認定に関して厳しい国だが「個人が私的利用する目的で国内に持ち込むものに関しては同形端末1台に限って免除する」除外規定があり、これに則って試用してきた。Google Glassは本来、ウェアラブル端末用のアプリケーション開発者向けに先行販売されたもので、アプリ開発者にとってはビジネスチャンスにつながるものだが、法規制によって電源さえ入れられないという現状のわが国の状況では、せっかくのビジネスチャンスも逃してしまう。お隣の韓国では、「研究、開発目的」であれば、他国の認証・検定等を通過している端末の持ち込み試用が認められている。スマートフォン主流の時代となり、わが国のモバイルコンテンツ業界、アプリ開発者等が世界で活躍できる環境が整い始めている中で、海外の端末を簡単に日本で利用できないというこの課題がある。来日観光客向けという切り口からでも、ぜひこの技適問題を上手にクリアできる道を切り開いてもらいたいものである。
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