■Wi-Fiとの相互運用の加速に期待 60GHz帯高速無線通信の標準化団体「Wireless Gigabit Alliance」(以下、WiGig)を統合したWi-Fi Alliance は、「WiGig」の最新状況に関する記者発表会を開催した。 WiGigは、数十GHzのミリ波帯の電波を利用し、Gbpsクラスの速度を実現するための無線LAN規格だ。IEEE802が策定した60GHz帯活用の物理層仕様「IEEE802.11ad」をベースにしており、60GHzで6Gbps程度の通信を目指して標準化が進められている。 来日したWi-Fi Allianceのケリー・デイヴィス フェルナー氏は「WiGig製品の認定ブランド名を“WiGig CERTIFIED”とする」とし、新しいロゴマークも発表した。今後、多くのWiGig CERTIFIEDの製品がWi-Fi CERTIFIEDになることが期待されており、WiGigとWi-Fiの異なる特性の通信技術をシームレスに切り替えて運用できるようになる。 ケリー氏は「Wi-Fi Allianceの相互運用認定プログラムが拡がり、WiGig CERTIFIED製品が加わったことを嬉しく思う。最初の相互運用認定プログラムは2014年にもリリースされる予定だ。Wi-Fi Allianceの認定ロゴは、消費者に信頼感を与え、テクノロジーを後押しするだろう。将来、Wi-FiとWiGigが業界の成長を加速していくものと予想されており、我々もそれを現実するように進めていきたい」と力強く語った。 またWiGig CERTIFIED製品は、政府グレードの暗号化による業界標準のセキュリティ保護も保証する。もう1つ重要なポイントは、周波数帯の60GHzから5GHzへ、または2.4GHzへと、自動セッション転送が行なわれることだ。これにより、前述のようなシームレスな切り替えが可能になる。 この他にも高度なアプリケーションをサポートすべく、複数のプロジェクトが進行しているところだ。たとえば、ケーブルを使わずに周辺機器やディスプレイなどに接続できる「ドッキング」、部屋を隔てたデバイス間でビデオストリーミングを可能にする「ディスプレイ」、シリアルでワイヤレス接続を可能にする「シリアルバス」、「SDやPCI経由の入出力」といったプロジェクトだ。「これらの追加アプリケーションに関する相互運用性認定は、2015年以降に実施する方針だ」(ケリー氏)。 さらにWi-Fi Allianceでは、WiGig関連の業界団体との連携も始めており、WiGigのいっそうの普及を目指すという。まず「USB-IF」(UBS Implements Forum)とは、メディア非依存のUSB仕様基盤をつくるために、Wi-Fi AllianceからWiGig Serial Extention Specification(WiGigシリアル拡張仕様)を移管するそうだ。 「VESA」(Video Electronics Standards Association)とは、モニターやテレビなどを接続できるように、DisplayPortでの認定を行なう方向だ。ケリー氏は「この2つの組織と密に連携することで、WiGigの接続性で素晴らしいワイヤレス・エクスペリエンスを実現していきたい」と述べた。■WiGigの優位性を示す2つのデモも披露 WilocityおよびDisplaylinkの協力によって、WiGigテクノロジーのデモも行なわれた。Wilocityのカントリーマネージャである西村文克氏が2つの実演を交えてWiGigの優位性を示した。 1つ目のデモはWiGig Dockによるデモで、もう1つのデモはWiGigのアクセスポイント(AP)を利用したものだ。前者では、ノートPCとDockがWiGigでつながっており、 DockはDisplayPort経由で大型ディスプレイと接続されている。ここでノートPCから4K映像を流し、大型ディスプレイに表示させるというものだ。このデモでは、4Kの高精細な映像が滑らかに映し出されていた。 一方、後者のデモは、ファイル転送の速度を比較するものだ。専用APには、IEEE802.11ad(WiGig)とIEEE802.11nの2つのリンクを張っておく。そしてPCのファイルをAP内蔵ストレージに同時に転送する。結果はのとおり。WiGigのほうが圧倒的に高速だった(約6倍)。総じてWiGigのポテンシャルが大きいことを確認できた。 ただし、ミリ波帯の電波を使うWiGigは、到達距離が短く障害物に弱いという弱点もある。そのため同じ室内にある機器の接続に利用される。一方、Wi-Fiのほうは、WiGigよりも速度は劣るものの、到達距離が長いため家屋全体での適用が可能だ。今後はそれぞれのメリットを活かす形で、両者を適用していくことになる。その際に前述のシームレスな切り替えが求められるわけだ。
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