トヨタ自動車の友山茂樹常務役員は3月13日の基調講演で、アドホック通信を活用することで車自体が電波塔の役割を持ち、独自の通信網を構築するシステムの実用化に取り組んでいることを明らかにした。友山常務は「将来のつながる技術としてアドホック通信がある。これは車自体が電波塔となって、通信キャリアから自立した車独自の通信網を構築するというもの。A車からメッセージを送る場合、途中のB車、C車を中継することによって、遠隔のD車まで届けることができる」と紹介。しかし「使える電波の通信容量に限界がある。また車が存在しない空間が広いと遠くまで届かないので、通信が途絶してしまうという課題がある」とも指摘し、その解決策として「ホワイトスペースを用いたアドホック通信の開発を進めている」ことを明かした。具体的には「世の中にはある目的に割り付けられていても時間的、空間的に利用されていない周波数が多く存在する。例えば日本テレビの電波は名古屋では見られないし、山間部ではNHKの電波も入らないエリアがある。この明き周波数帯(ホワイトスペース)を車がエリアごとに自律的に検出して周波数を切り換えながら通信を継続する」というもの。「このホワイトスペースを用いると、より遠隔でかつ大容量のデータを扱うことが可能になる。昨年、宮崎県の山間部で実施した公開テストで、我々の開発技術が次世代の車の通信として有効であることを実証した」ことも披露。さらに友山常務は「このアドホック通信が真価を表すのは、実は災害時」とした上で、「この観点で車は通信キャリアとしても社会システムの重要な役割を担う可能性があると考えおり、アドホック通信はつながる機能を保障するために、ぜひ実用化したい」と強調した。