「パソコンの操作をアシストする視線テクノロージー」は、キーボード・マウスがなくても目を動かすだけでパソコンの画面をスクロールすることができるもの。従来このような技術は、ゴーグルを装着したり、高価な専用大型カメラが必要だった。富士通研究所では、一般に使われている安価なPC向け内蔵CMOSカメラと近赤外線LEDを用いて、視線を検出する技術の開発に成功したという。ハードウェア部(視線検出部全体)の厚さは7mmと薄く、コンシューマーPCでも十分に使えるサイズだ。
パソコンの画面をスクロールする仕組みは次のとおりだ。視線によって位置が変わる瞳孔をカメラで検出すると同時に、眼球の表面(角膜)にも近赤外線LEDを照射して、その角膜反射を検出。反射の位置は視線方向に影響を受けないので、瞳孔と角膜反射の2つの位置関係から、視線方向を算出できるというもの。瞳孔の抽出など、カメラで撮影した画像から視線を検出する処理はソフトウェアで行なう。小型カメラでも正確に人の目の動きを検出できる画像解析を開発しており、精度の高い認識が可能になった。
今回開発した技術を用いれば、PCの筐体のデザイン性を損なわずに非接触で人の視線を検出できるセンサーが組み込めるようになる。画面の自動スクロールだけでなく、ズームやなどの操作も視線で行なえる。また目を閉じて、クリック操作を行なうといった操作も研究中だという。画面のどこを見ているか検出できるので、ユーザーの興味や関心を把握することもできるだろうし、体の不自由な方のPC操作をアシストするインターフェイスにもなるだろう。
この技術は本年度中に実用化を目指しているという。近々にも、視線をインターフェイスの1つとして利用したPCが登場するかもしれない。乞うご期待だ。