大塚商会のERPパッケージ「SMILE」シリーズ。この業種・業界向けテンプレート開発にあたり、大塚商会ソフトウェア協力会加盟の数社が手を挙げ、請負受託開発から先行投資の開発による自社製品化のビジネスへの転換に踏み切った。今回、テンプレート開発を行なった協力会のメンバーが集まり、開発検討や決断、取り組みによる変化や今後の展望などについて話し合う座談会が行なわれた。前編に続き、その模様をお届けする。 座談会に参加したメンバーは次の通り。(下段は各社が用意するテンプレート)・日本ナレッジ株式会社 代表取締役 藤井洋一氏(司会)「鋼材卸売業向けシステム PowerSteel(パワースチール)」・株式会社アート・システム 営業本部 本部長 沢口琢也氏「原材料製造業向け生産管理システム Blendjin(ブレンジン)」・株式会社システックス 第三システム部 部長 田中友人氏「ビルメンテナンス業向け販売管理システム B.M.Manager(ビーエムマネージャー)」「医療機器販売業向け販売管理システム Medical Agent(メディカルエージェント)」・株式会社綜合システムプロダクツ 代表取締役 大野秀哉氏「出版業向け販売管理システム Quick出版BS(クイックシュッパンビーエス)」「通信販売業向け販売管理システム Smart通販(スマートツウハン)」・株式会社大和コンピューター 常務取締役 企画管理本部長 林正氏「アパレル業向け販売管理システム ApaRevo(アパレボ)」・株式会社トータルシステムデザイン 執行役員 事業部長 冨田和実氏「食品卸業向け販売管理システム FOODMASTER(フードマスター)」■自社製品開発で見えてきたこと藤井氏:ここまでお聞きしていると、自社製品を持つのが初めてというか、テンプレートがわりと新しい取組みだったようですね。取り組まれたときに、苦労した事や、良かった事など、開発途中の話としては何かありますか?沢口さんいかがですか?沢口氏:今回の取組みの中で、元々大塚商会さんが販売していた装置業向けのパッケージの分析や、(装置業の)業界について調べた時に、7年前くらいの段階ではパッケージの出荷本数自体があまり出ていませんでした。そこで、今回の開発は旧システムの踏襲型でなく、機能を完全リニューアルする形で計画しました。業界に特化したもので、なお且つ一般に受けるものはどんなものなのかという部分に着目しましたが、正解がない中での検討は非常に悩みました。様々な人にアドバイスをいただくことでスタートすることができました。藤井氏:開発期間はどれくらいでした?沢口氏:丸1年かかって、企画から作りこみまで実施しました。メンバーも、私自身もとても勉強になりました。製販一体型のパッケージとよく言いますが、我々で言えば営業と技術が一体じゃないと良いものが展開できないということに気付かされた。営業・技術の一体感が製品コンセプトにとって重要と感じました。藤井氏:システックスさんは、パッケージを持たれていたかと思うのですが。田中氏:以前、健康保険組合向けのパッケージをやったことはありますが、非常に昔の話ですし、「SMILE」での企画は今回が初めてです。苦労したのはやはり答えがないということ。敢えて言えば、売れる機能ということが答えになるのかもしれませんが、マーケティングのノウハウが無かったため、大塚商会さんに非常にご協力いただきました。藤井氏:医療機器販売業向け販売管理システム「Medical Agent(メディカルエージェント)」を用意されていますが、医療機器卸は業界的にも難しいですよね。田中氏:仕組み自体は、以前から一般的な販売管理の経験はあるので、そこまで難しくなかったと思います。ただ、業界特有の商取引の習慣を知らなかったものですから、大塚商会さんの助けがないと無理でした。本社のある長野県内にももちろんお客様はいますが、そこで話を聞いてそこだけに特化しても、ほかのところでどれだけ通用するのか?といった不安もあり、本当にどんな機能にするのかというのは悩みました。大野氏:これまでも、上流のSEであればお客様と接する機会もあり、ある程度経験もありました。しかし、プログラマーレベルになると中々お客様のお話を聞く機会がなかった。今回自社製品を持つということで、そういったメンバーも、お客様はどう考えるだろう、何を求めているだろうと考えるなど、意識改革が起きました。弊社の今年の方針は、自分で考えて、自分で作って、自分で売る。その意味では今回の自社テンプレートが一番具体的な例で、受託開発型から一つ飛び出せるかなと思っています。会社としては、特化する事でノウハウが蓄積され、結果コストも抑えられます。カスタマイズ部分は利益にもなりますが、品質維持の負担も大きい。まずはテンプレートとしてきちんとしたクオリティのものを出せれば、お客様の適応率も上がるものと思います。冨田氏:「FOODMASTER(フードマスター)」は、元々あった食品卸のパッケージと、水産卸のパッケージ、この2つを1本にまとめたものです。両方の機能を組み合わせたわけですが、どれとどれの機能をどう組み合わせるか非常に苦労して、結果として1次リリースが少し中途半端になってしまいました。その後すぐに2次強化を進め、アンケート等で各拠点のSE、営業さんの声を吸い上げて、優先順位をつけて機能強化したところ、2次強化以降大きく販売が伸びました。藤井氏:もう一つのEDIの業務支援パッケージですが、これは今後流行るのではないでしょうか?冨田氏:これまで、JCAが(電子商取引の)主流でしたが、今どんどん流通BMS(ネット回線)に変わっています。これにより、各企業ごとにばらばらだった電子商取引のメッセージフォーマットが統一されます。「MEDIA(メディア)」がベースとして考えているのは、アパレル、小売り、ホームセンター、百貨店、ドラッグストアとメーカ・卸の取引などです。イオンさんが今年の12月までにJCAによるEDIをやめるので、取引先はBMSに移行しないといけないという状況もあります。林氏:弊社は以前からアパレル業に関して色々お手伝いしてきたので、新規の取り組みという雰囲気ではありませんでした。これまでと同じ人間を軸にして、要望などある程度つかんでいる中で着手しましたので、わりとスムーズでした。アプリケーションの業務がだんだん高度化していく中で、若手が習得できない状況もあり、「SMILE」に携わっているのはキャリアのあるメンバーばかりという実態もありました。「ApaRevo(アパレボ)」の開発に際して、大塚商会さんからかっこいいパッケージ・ロゴなどもご提案いただいて、若いメンバーの参加意識も格段に上がりました。現状は、かなり若いメンバーや女性も入っていますし、社内が活性化して、商品に対する思い入れも生まれました。■社内の意識が明確に変わった藤井氏:今まさに2番目のテーマが出ましたが、取り組んだことによる社内の変化というかメリットがあったと思います。うちの会社で言えば、ベテランが増えてきて、ノウハウをどうやって若手に継承しようかと悩んでいました。若いメンバーはアーキテクチャーを習得するのが得意、ベテランは業種知識やアプリケーション機能が得意、双方が補完しあうことで継承がうまく行きました。自分たちの商品が世にでた!という意識が若い子たちに芽生えたことも大きかった。沢口さんのところはいかがでしょうか?沢口氏:自社製品を売る際に、コンサルティング的なことなど、上位フェーズからやる必要がありました。これまでフロントに立っていないメンバーも前に出てやったことで勉強になり、テンプレートを作る以外の効果、意識の変化もでてきました。「Blendjin(ブレンジン)」の場合は生産管理システムなので、右から左に売って、さあ使ってくださいとはできません。上流のコンサル、分析も含めて教育をし、誰が出て行ってもある程度、指導やコンサルができるというようにしていきたいです。ベテランの方が安心ということもありますが、若手も鍛えていくと、この業界って実はこんなことしなければいけないんだという意識がつきます。そういった意味でもいいきっかけでした。田中氏:我々も、意識の変化という面で、同じような効果がありました。また、開発の視点が変わってきたというのがあります。不特定多数のお客様の運用を考えた取組みをするようになりました。目の前の機能をただ仕様書におこして、ただコーディングするだけじゃなくて、運用を考えた視点を持てるようになりました。大塚商会さんとの定例会の中で、受注だけでなく、失注についても原因分析をし、製品の弱点がよくわかりました。受注したお客様だけでなく、色々な営業さんや、選んでいただけなかったお客様からも教えてもらえる。というところが非常に良かったところです。冨田氏:弊社は、「FOODMASTER(フードマスター)」のリリース後、すぐ2次強化に取り組んだという話をしましたが、1次リリースの販売実績が中々出なかった時に、開発メンバーのモチベーションコントロールが大変でした。少し自信をなくしていた部分もあり、2次強化で結果がすぐに出た時には、本当に良かった!となりました。そこから、数字もともなって士気も高まり、大型案件もいくつか取れて、良い方に回転していますし、これを柱に育てたいと思っています。最初はきつかったですが(笑)。藤井氏:大野社長、今後の販売戦略についてはいかがですか?大野氏:非常にありがたいのは、「SMILE」という柱がある中で、ソフトウェア協力会の仲間がそれぞれの得意技・業種ノウハウを持ちながら協業をすることで、相乗効果が上がっていることです。協力会のテーマは「共生」ですし、非常にいいプロモーションだと思っています。刺激も受けますし、今後ますます色々な連携もあると思います。社内では、やはり時間やコストでタフな面もありつつ、それによって元々課題であったプロジェクトマネージメントの面で、現在担当している責任者がかなり成長できたかなと思っています。林氏:製品的には色々やりたいこともありますが、今はとにかく受注が多く、個別案件の対応が追いつかない状況です。なんとかテンプレートの強化は合間を縫いながらも実施していきたいと思っています。先ほども出ましたが、人を育てるというところで、もう少しお客様の声を直接聞かせたり、といったことはやっていきます。田中氏:共生という話がありましたが、実は、「Medical Agent(メディカルエージェント)」の2次強化の時に、ハンディ連携オプションというのをやらせていただきました。実はそのソースを大和コンピュータさんからいただいて、連携ができました。今、そのほかの仕事に関しても一部協力させていただいていますし、そういった関係ができたのは良かったと思います。弊社としては、徐々に個別案件やカスタマイズの話がきています。その分をパッケージに還元していきたいですね。沢口氏:どんどんお客様のところに出て行っています。訪問回数でいくと、2年間で同行が170回くらい、社数でいくと90数社になります。製造業の現場に出向くと、原価にフォーカスがあたったり、在庫管理をどうしていくかだったり、営業の方と一緒に歩くことで色々なテーマが見えてきます。そうしたことから原価配合オプションがリリースされることになりました。また、競合他社のパッケージ分析も始めています。ベースはできているので、もう少し業種特化したらどうかなという切り口で攻めていけたらと思っています。藤井氏:最後になりますが、弊社でも鋼材というキーワードで、木材とか紙といった中間素材を狙っていこうとしています。開発メンバーがパンパンで中々進まないという部分もありますが(笑)。この協力会は本当に良い会で、仕事も含めて結構やり取りしていて、そういった意味でも今後とも情報交換して、良いビジネスが続けられればなと思います。本日はどうもありがとうございました。