スマートメータに用いる通信方式として、特定小電力無線や電力線通信(PLC: Power Line Communication)が挙げられるが、直接通信だけで広範囲をカバーするのは困難であり、端末間で中継を行うマルチホップ通信が必須である。筆者らは、これまでにPLC用マルチホップ通信技術を開発し[1]、集合住宅向けのスマートメータや電力制御システムを実用化してきたが、これをベースに、900 MHz帯無線を用いた大規模ネットワークに適用するための開発を行った。本稿では、開発したマルチホップ通信プロトコルの原理と、実環境での性能評価に関して述べる。
3. マルチホップルーティングプロトコル 3.1 課題 中継ルートを生成するためのルーティングプロトコルは、リアクティブ型とプロアクティブ型に大別できる。リアクティブ型は、通信要求発生時に宛先端末までのルートを探索する方法で、AODV( Ad hoc On Demand Distance Vector)やDYMO(DYnamic MANET On-demand routing)が標準化されている。ルート要求パケットをフラッディングするため、端末台数が多くなると輻輳しやすく、大規模ネットワークには適さない。また、リンク品質を考慮したルート生成も困難である。
プロアクティブ型は、定常的にリンク情報を交換してルートを生成する方法であり、OLSR( Optimized Link State Routing)が代表的である。リンク品質を考慮したルート生成にも対応しやすく、スマートメータ用に適している。ただし、標準的なプロトコルでは、端末数の増加にともなってルート探索トラフィックが急増するため、数千台の大規模ネットワークには対応困難であり、また、伝送環境の変動に対する追随性も不十分である。これらの課題を解決すべく開発したプロアクティブ型ルーティングプロトコルCMSR( Centralized Metric based Source Routing)の特徴を述べる。