J:COMが提供する多チャンネルテレビサービスの主力は、「J:COM TV デジタル」。地上デジタル、BSデジタルのほかCSの多チャンネル放送、VDOサービスの「J:COM オンデマンド」、HD録画ができるSTB「HDR」が利用できる。J:COMオンデマンドに対応したSTBは、今のところ130万世帯に行き渡っている。HDRは2006年にレンタルを開始し、2008年9月末には35万台の契約となった。さらにHDを500Gバイトに強化しDVDへのダビング機能を付与した「HDRプラス」のレンタルも開始した。こちらも出だしが好調ということだ。
J:COM TV デジタルでは、番組のハイビジョン化も進めている。地上デジタル放送とBSデジタルはすべてハイビジョン化しているが、多チャンネル放送は7チャンネルにとどまっている。光ケーブルの周波数帯域が足りないためで「やみくもにハイビジョン化はできない」という状況。そのため、映画、スポーツ、ドキュメンタリーなどニーズが高いチャンネルを優先的に進めている。
2007年4月からは、関西にて戸建て住宅にも対応した最大160Mbpsのサービス「J:COM NET ウルトラ160メガコース」を開始した。ここでは、当時はまだ標準化に至っていなかった「DOCSIS 3.0」を採用し、1本40Mbpsのチャンネルを4本束ねることで160Mbpsを実現した。当時、DOCSIC 3.0対応の設備は値段が高く大型などの欠点があった。しかし、「関西エリアは競争環境が厳しく、機会損失を避けたかった」との考えから踏み切ったと振り返っている。
東京の勝ちどきでは新しい取り組みがある。大型の集合住宅「THE TOKYO TOWERS」にてサービスを提供した。本来、勝ちどきはJ:COMのサービスエリアではない。しかし、電気通信役務利用放送事業者に登録するとこで、サービスが提供できた。THE TOKYO TOWERSでは、全戸にインターネット接続サービスを提供。「インターネットを標準提供すると、テレビや電話も加入する」との効果もあり、「今後も案件によってはエリア外にも提供」としている。
このような取り組みは、J:COMの「ボリューム+バリュー」戦略に基づくもの。ボリュームはサービス地域の拡大、バリューはARPUを上げることを差す。サービス地域の拡大はCATV局の買収により実現。ARPUの拡大は、J:COM NETの160Mbpsサービスをはじめ、テレビサービスの「J:COM TV デジタル」、VODの「J:COMオンデマンド」、HDD内蔵のSTB「HDR」などがある。
《安達崇徳》