声優の大塚明夫と、押井守監督が2日、TOHOシネマズ新宿で行われた『イノセンス 4Kリマスター版』公開記念トークイベントに登壇。同作への思い入れや、4Kならではの見どころを語った。
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同作は士郎正宗の漫画を原作とし、押井監督が手がけた長編SFアニメーション『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の続編。今回、公開20周年を記念して、4Kリマスター版となり、2月28日からTOHOシネマズ日比谷ほかにて、2週間限定で2作同時上映されている。
満員のシアターにて、拍手で迎えられながら登場した2人。バトー役を務めた大塚は「こんなにたくさんの人が20年も前の作品を見にこうやって集まってくださるということに胸がいっぱいになります。こんなにたくさん集まってくれてありがとうございます」と感謝を述べた。押井監督も「今日は大きなスクリーンで堪能していただければと思ってます」と挨拶をして、トークイベントがスタートした。
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最初に制作時の思い出について聞かれると大塚は「当時、どう演じればいいのかを押井さんに質問したんですよ。そうしたら『簡単ですよ、これはバトーの恋の物語ですよ』って。それを聞いたらあっという間に映画の作りが見えたんです」と、押井監督からのアドバイスを振り返った。続けて「なので『GHOST IN THE SHELL』でのバトーの寂しい気持ちを引きずったまま、『イノセンス』をご覧になるとより楽しめると思います」と、笑顔で話した。
同作を制作したきっかけについて押井監督は「当時、アニメの仕事は辛いからやめようと思っていた時期で。だけど自分には合ってる仕事だと思ってたし、アニメは嫌いじゃないし、もう一回やってみようかなと思って、プロデューサーに出した企画のひとつが『イノセンス』でした。素子とバトーをもうちょっと見てみたいという気持ちがあったから、続きを作りたかったんです」と、当時の想いを打ち明けた。
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だが、アニメ制作の辛さも十分に味わったという。「監督としてアニメを作るには“待つ”辛さがあるんですよ。絵があがって、色がついて、声優さんが声を入れて、初めてキャラクターが立ち上がってくる。それまでこの作品だと2年半くらいかかってる。『GHOST IN THE SHELL』から3年後の世界だから、必ず登場人物たちは変わってるわけで。それを確かめるまでは安心できなかったですね」と当時の監督としての苦悩を振り返った。
続けて「同じ声優さんが、同じキャラを演じていてもやっぱ変えなきゃいけないんですよ。その変化を考えることが、この作品のやったことのすべてと言ってもいい。そしてアフレコで第一声が入ったときは、“つながった”感じがしましたね」と、作品への想いを吐露した。
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押井監督の言葉に大塚は目に涙を浮かべながら「バトーと素子の短いやり取りの中にどれだけのものが入ってたかっていう、それを全顔面で、全身で感じ取ってもらえれば嬉しいです」と話した。
最後に4Kリマスターだからこその見どころについて押井監督は「公開時に少し話題にもなってましたが、オープニングで人間の目がアップになるんだけど、何かが映ってるんですよ。0.1秒もないけど、ぜひ確認してほしいですね」と細部のこだわりを語った。大塚も「見えなかった人はもう一回劇場に来て見てください」と重ねてコメントした。
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