俳優、声優、タレント活動のほか、特技を生かしたイラスト個展の開催、ライトノベル作家として『夢にみるのは、きみの夢』(小学館・ガガガ文庫)を発表するなど、多彩な一面を見せる三田。そんな彼女が出演する本作は、1970年代の昭和を舞台にした復讐劇で、父親をだまし大きな借金を負わせた詐欺師たちを追いかける南上宮陽子(ナガミヤヨウコ)を演じる。
今回、熱い気持ちで舞台に取り組んでいるという三田に話を聞いた。
ーー三田さんの新たな一面が見られそうな主演舞台となりますね。
今までやったことのない雰囲気ですし、周りが役者を生業とされている方々ばかりなので、「主演だから気張る」というよりは、皆さんに教えていただきながら引っ張っていただくというスタンスでやっています。日々勉強ですね。
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ーー三田さんが演じる陽子はどんな人物ですか?
精神的にも肉体的にも強い女性で、どこかずっと張り詰めている脳筋(脳が筋肉)タイプ(笑)。私は強い女性が好きなので、陽子にすごく惹かれます。 だけど、“強くいなければいけない”理由はめちゃくちゃあるし、彼女も人間で……というのが本編で描かれているので、そこは観に来ていただいて確認してほしいですね。
ーーご自身と似ている面・似てない面を教えてください。
思春期のころの自分と似ているなと思いました。いまは、人の意見を聞くのも大事なことだと思っていますけど、当時は、なんでも1人でやらなきゃいけないと思い込んでいたし、「人に甘える=弱い」みたいに思っていて。「気にしないでください。私は私でやります!」と言っておいてパンクするタイプ(笑)。単純で変な場面で一直線なところが陽子と似ているなと思いますね。逆に、物語のクライマックスシーンで、陽子のある考えを聞いた時に、決定的に違うなと思いました。
ーー自分の考えとは違う台詞を演じる際、やりにくさは感じるものなのですか?
陽子という役が(自分に)まだ入っていないときは、感情が直結しなくてめちゃくちゃやりにくいですね。でも、だんだん、彼女の気持ちになって“陽子の言葉”として言えるようになるんです。それが芝居だと思うんですけど、そのフェーズに入るのが本番入る直前だったりして……。
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どの作品でもそうなんですけど、本番にならないと、完璧になれないというか。私、たぶん我が強いんですよ(笑)。「なんでそうなるんだよ」って思っちゃうから。そこをすり合わせていく作業に必死です。
ーー舞台の空気や、目の前にお客さんがいることが「完璧」になる手助けになっているんですかね。
スイッチなのかな? 今までも稽古中に「なんかしっくりこないな」と思っていたのに、初日がめっちゃ良かったり、感情がたかぶって泣いちゃったり……。なんなんでしょうね(笑)。
ーー殺陣シーンもあるそうですが、手応えはいかがですか?
難しいです! 剣殺陣は経験があるんですけど、今度は手。私、人を殴ったことがないんですよ。当たり前ですけど(笑)。だから、パンチの仕方も構えもめちゃくちゃダサい。基本的なことから習っていますね。相手をしてくださる役者さんがすごく熱い方ばかりなので、日々、頑張れています。
ーー共演者でムードメーカーだなと思う方は?
同じ事務所の中林登生(円神)くんですかね。彼が演じているのが、人懐っこくて1番動く役なんですけど、登生くん自身も可愛らしい性格をしていて、現場ですごく愛されています。もちろんしっかりしている部分もあるんですけど、セリフを間違ったときのごまかし方が面白くて、みんなで癒されています。
ーー三田さんはさまざまな活動をされていますが、「俳優」という仕事については、どうとらえていらっしゃいますか?
楽しいですね。そもそも、NMBを卒業したころは「お芝居やろう」とは思っていなかったんですよ。卒業して1作品目の舞台『脳漿炸裂ガール ~人間動物園~』に出させてもらったときに、「これから演技をやることないだろうけど、経験だな」と思っていて。でも、舞台の形式も面白かったし、演技に興味も出てきて、どんどん芝居の幅を広げていきました。演出家さんの数だけ演技の仕方があるから、人に合わせていくのも面白いし、考え方も違うし、そこから夢中になっちゃいましたね。あと、稽古期間があって、 舞台が終わると、次の現場でかぶらないかぎり共演者の方と一切会わなくなるって儚くないですか? 私、飽き性だから、スパンがちょうどいいのかもしれないです。
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ーー確かに儚いですね。だからこそ魅力もあるというか。
結局、舞台に立つのが好きなんです。ライブでも、お客さんを煽ったり、巻き込んだりして、レスポンスをもらうと嬉しいし、「舞台を観に来てくれている人が、この感情をどう受け取ってくれるのか」という博打をするのも好きですね。
ーー作家活動やイラストなど、ご自身で表現できるものがたくさんあるのは、やはりいいものですか?
めちゃくちゃいいですね。私は、形を問わずに表現するのが好きなんですが、書けなかったり、芝居に行き詰まったり、どうしてもスランプはあって。そのときに、他の表現での吐け口があるのは、すごくデカい。趣味がいっぱいあって良かったなと思います。
ーーそんな三田さんが今、やってみたいことは?
夢を支える仕事をしたいです。今までの経験を自分のものだけにしとくのはもったいないから、迷ってる人に対して「こういう道筋があるよ」というものを提示できたらなって。
たいした芸歴もないんですけど、「今アイドルやってます。こういうことに悩んでます」という方がいらっしゃるんだったら、自分が今までやってきたものをまとめて「こういう解決口があるんじゃないかな」と選択肢を広げるようなお手伝いですね。今は、SNS社会で人に見られる状況がずっと続いてるから、私たちのころより悩みごとも増えているだろうし、そういう子たちが疲弊しないように支えていけたらなと思います。
ーー最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
舞台じゃないと見られない表現だったり、舞台じゃないと味わえない感動だったり、私だけの力じゃなくて、演出家の方の世界観や共演者さんの魅力がギュッと詰まってる作品だと自負しています。
今回の作品は、いろんな意見が分かれる舞台になると思うんですよ。「あなただったら、この結末になった瞬間どうしますか?」というのは聞いてみたいので、ぜひ来ていただきたいです。あと、個人的に殺陣を頑張っていますので、こけないように見守っていてください(笑)。