1969年~95年まで、足掛け26年にわたり全48作が公開されてきた国民的映画『男はつらいよ』。倍賞は同作で、主演の渥美演じる“寅さん”こと車寅次郎の妹・さくらとして出演。シリーズを支えてきた。
阿川佐和子から「渥美清さんという方は“気遣いの方”だったって(聞きましたが)?」と問われると、倍賞は「本当にそう思う。人間としてどうあるべきかということをあの人は教えてくれた」と回顧。
例えば彼女が精神的につらい時、渥美は普段は食べられないような料理の店に連れて行ってくれたとか。つらい理由は特に聞いてこなかったというが、倍賞は「ただ時間を一緒に過ごしてくれた」と振り返り、そばにいてくれたことで心が満たされたと語った。
同作には毎回、寅さんが恋するマドンナが登場するが、その女優がキャストの輪の中に入れないでいると、渥美はその人を控室まで迎えに行き、バカ話をしながら一緒に現場に入ってくることで自然と周囲になじませたという。
渥美は晩年、立っていることもままならなかったとも言われている。倍賞はそんな彼について「自分がキツかったんだろうに、ほんとにキツかったんだろうに、あの人はきちんと、そういうことを、やった人……でした」と言うと、思わず声を詰まらせ、目を潤ませていた。