
実は発表会後、モトローラ・モビリティ・ジャパンの代表取締役社長 ダニー アダモポウロスさんと、プロダクトマネージャーの島田日登美さんにお話をうかがうことができました。社長にインタビューできることは滅多にないことなので緊張するはずだったのですが、最近、ゆるキャラにもなったダニーさんとあって、リラックスしたムードでお話を聞くことができました。


日本での成長は「短距離ではなくマラソンで」
ダニーさんは、新製品発表会の冒頭で、日本市場での自社の業績に対し「好調で満足している」と語っていました。私はこれを意外に思いました。いやいや、世界のモトローラにしては控えめじゃないですか、もっとバンバン売れたいでしょう?
いえいえ、モトローラの日本市場に対する姿勢は「短距離ではなく、長距離走、マラソン」なんだそうです。日本は重点市場ではあるものの、「馬鹿げたような拡大ではなくて、もっと地に足の付いた、着々とした成長を目指したい」とのこと。さすがはレノボグループという感じでしょうか。モトローラはメキシコでは1位、ブラジルでは2位と、ラテンアメリカでは高いシェアを獲得しています。ヨーロッパやインドでも大きく成長しているとのこと。焦りは感じられません。日本に参入しながらも、受け入れられずひっそりと姿を消していくメーカーもありますが、モトローラはそんな心配はなさそうです。
北アメリカでは全キャリアで取り扱われていますし、もちろん、日本の大手キャリアへの納入も目指しています。日本のキャリアがメーカーに要求するレベルは世界でもっとも高いといわれていて、そこに「課題があるのは事実」とダニーさんは認めています。だからこそ、まずはMVNOを最優先に注力し、SIMフリー端末で評価を高めているところ。キャリア納入はその後という構えです。以前、ソフトバンクなどで扱われていましたけれど、モトローラのキャリア端末をまた見てみたいですね。
その一方で、法人に提供することも狙っているといいます。プロダクトマネージャーの島田さんによると、「モトローラ端末は、(素のAndroidに近い)“ピュアAndroid”なので、法人のお客様に使いやすいと言っていただくことがあります。iPhoneほど高額じゃなくていいというお客様もたくさんいらっしゃいますので」ということでした。
ちなみに、モトローラの端末はハイスペックな方から、z、x、g、e、cのシリーズがあります。上位3シリーズに加え、今回、下から2番目のeシリーズが日本にも投入されましたが、もちろんzやxシリーズは継続されます。ただ、cシリーズは日本で展開するには「低価格過ぎて、うまくいかない」との判断で、投入の予定はないそうです。
意外に若い人に受けている
また、もう1つ、プレゼンテーションで意外に思ったのが、モトローラの製品は20代、30代の若い人に支持されているということでした。

モトローラといえば、世界で初めて携帯電話を作った企業。50代以上なら、当時としては画期的だった小型携帯電話「マイクロタック」に魅せられた人もいるでしょう。けれど、今の20代は当時のモトローラについてあまり知らないはずです。
ダニーさんも「正直、データを見て我々自身が驚いた」といっていました。モトローラ端末を買っている典型的なユーザー像は、東京に引っ越してきたばかり、仕事も始めたばかりでお金はあまりなく、高い家賃を自分で払わなくてはならない、スマホは良いブランドで品質も高く、お買い得感のあるものを長く持ちたいと思っている人だそう。そういったユーザーのニーズを、モトローラの端末は満たしているというわけです。
また、島田さんは「そろそろ男性がiOSに飽きてきているのでは」という考えも語ってくれました。「Androidの自由度に気がついた。モトローラ端末はピュアAndroidで、余計なものが入っていない。カスタマイズできる喜びを見つけちゃったんじゃないでしょうか」。
なるほど、男子はいろいろ自分好みに工夫するのが好きそうですもんね。島田さんは「お父さんとショップに来ていた男の子が納得して買っていました」とも。お父さんから当時のモトローラのカッコ良さを聞いて、それならと納得して買う。いい話じゃないですか。
実際、私の周りにいる数少ない20代男性にモトローラについて聞いてみたところ、世界で初めて携帯電話を作ったとか、「RAZR」という超薄型ケータイが世界を席巻したといった、かつてのモトローラについては「知らない」と答えました。でも、モトローラのブランド自体は知っていました。いろいろ変わっても、やっぱりモトローラの認知度は高く、その製品がお安く買えるとなれば購買意欲も高まるでしょう。
ちなみに、従来端末では「moto」と表記されていたブランド名が、新モデルでは「motorola」に戻りました。また、moto e5の背面の指紋センサーの中には「M」のロゴがあしらわれていて、ここは個人的にカッコいいと思ったところです。最近、モトローラは明るくポップなカラーで広告を展開しています。昔のモトローラの、ブラックが基調の質実剛健なイメージも好きでしたが、明るく若々しいモトローラも悪くないと感じます。
