
5Gの実験環境が利用料金なしで使える!
お台場ラボでは、(1)さまざまな最新デモで5Gを知る、(2)お台場ラボの検証ルームで5Gを使う、(3)5Gを用いた共創の検討、といった利用方法が想定されている。施設で利用できるのは、5G実験機器や周辺機器、エッジコンピューティング(後述参照)を想定した高性能サーバーなど。利用には予約が必要ながら、利用料金は発生しない。

ソフトバンクでは、MEC(Mobile Edge Computing)サーバにより、5Gを利用したサービスの可能性を最大限に引き出すことを考えている。たとえば5G時代には、大容量の映像データを取り扱う企業も出てくるだろう。すると、どこかで重たい画像処理をする必要に迫られるが、クラウドを介していたのでは通信の遅延が起こりかねないし、かと言って利用者のスマートフォンに処理を求めることも(GPUやCPUの負担が大きすぎて)現実的とは言えない。そこでソフトバンクでは、基地局に近いところにMECを用意することで企業のサービスを支援することを考えている。企業は、ソフトバンクのMECにより通信の遅延を回避しつつ、モビリティにも優れたサービスを消費者に提供できるというわけだ。

スポーツ中継を360度でリアルタイム配信など、5G活用のデモも体験できる
お台場ラボでは、そんなMECの利便性をアピールするデモがいくつか用意されていた。2つほど紹介しよう。
ひとつは、360度カメラで撮影した高精細な映像をVR機器でリアルタイムに視聴するというもの。複数の映像をつなぎ合わせるスティッチング処理にCPUを使い、またグラフィックの処理にGPUを使う。データサイズにして約200Mbpsという大容量の映像を遅延なく視聴するために、本来なら高性能なPCが必要になるケースだ。しかし高負荷処理をMECにオフロードすることで、遅延を最小限に抑えた状態で、高精細な360度の映像が視聴可能になる。ソフトバンクでは、この技術はスポーツ中継やコンサート鑑賞といった用途でも利用できると説明していた。

MECを利用すれば、ビデオカメラで撮影中の高精細な映像にリアルタイムでエフェクトをかけ続ける、なんてことも可能だ。展示ブースでは、AIにあらかじめ学習させておいた歌川広重、ピカソ、ミュシャ、クリムトなどのタッチで、生配信中の映像にエフェクトをかけるデモが紹介されていた。担当者は、エンタメ用途のほか、報道番組で一部をモザイク処理しなければならないケースなどに活用できると説明していた。

2020年までに5G対応の準備を
登壇したソフトバンク 代表取締役 副社長の今井康之氏は「行政、企業からはすでに5Gを利用したいとの要望が数多く届いている。今回、こうしてお台場ラボというIoT、5Gの実証実験をおこなえる場を紹介できるのが大変な喜び」と挨拶。またGPU、CPUの処理をオフロードするMECについても触れ、「当社がVision Fundで投資しているNVIDIAや、グループのARMといった企業の技術が活用できる。ソフトバンクグループのシナジーを活かして、様々な企業のお役に立てれば」と抱負を述べた。

テクノロジーユニット 技術戦略統括 先端技術開発本部の湧川隆次氏は「5Gが商用化される2020年まで、まだ少し時間がある。いまから準備を始めることによって、5Gが展開し始めたと同時に色んなビジネスをスタートできる。ソフトバンクでも、色んな企業様と”共創”していきたい」と話していた。