■iliの開発コンセプト
iliはオフラインで音声翻訳できるのが特徴の製品。重さはわずか42gしかなく、ストラップを通して首から下げて持ち歩くことが可能だ。翻訳スピードは最速で0.2秒。英語、中国語、韓国語の3言語に対応している。そもそも、どのような経緯で開発された製品なのだろうか。ログバー 代表取締役 CEOの吉田卓郎氏が詳細を語った。

世の中に翻訳サービスは増えてきたが、オンライン環境が必須となるものが多い。しかし海外でインターネットに接続するのは、決して容易なことではない。そもそも電波の状況が良くない地域もある。そこで吉田氏は、オフラインの翻訳機が必要だと考えた。いくつもの試作機を経て、ようやく現在の形に落ち着いたという。

iliが競合製品と大きく違うのは、機能を一方向の翻訳に絞った点。例えば日本語で喋った「おはよう」は英語、中国語、韓国語に翻訳できるが、相手が喋った言葉は日本語に翻訳できない。これについて吉田氏は「実際の場面では、相手に翻訳機を渡して、使い方を説明して、喋ってもらうまでにこちらの心が折れる。相互の言語を翻訳することは技術的には可能だが、敢えて割愛した」と説明する。iliでは、こちらの意思を伝えることにフォーカスを当てたという。


店舗の奥には黄金のiliが用意されており、「行きたい国」と「そこでやりたいこと」を伝えると豪華賞品が当たるユニークなイベントも開催中。海外旅行、ili本体、こんにゃくのいずれかが当たる趣向となっている。

このほか屋外には「PANIC BOX(パニックボックス)」という小屋を用意する。これは「海外旅行先で言葉が通じない絶望感」を擬似的に味わえるコーナーで、例えば「中華料理店でビールの注文が一向に通じない」「マッサージ店で痛みを訴えているのに分かってもらえない」といった、外国人と意思疎通できないもどかしさを存分に体験できるという(取材日はまだ準備中だった)。
担当者に話を聞いた。昨年末にリリースを開始したiliだが、いま40~70代の購入者が増えているという。ボタンひとつのシンプルな設計にしたこと、インターネットに接続する手間がないことが支持されているようだ。ところでiliには、どのくらいの単語数を収録しているのだろうか。これについては「数は明らかにできないのですが、旅行や観光に特化した単語、フレーズに注力することで高い精度を出しています」と担当者。中国語であれば水餃子、小籠包、北京ダックなどの単語はもちろん収録しているが、「オススメの料理を教えてください」のように伝えて料理のメニューを指さしてもらう、といった使い方も想定しているという。

micro USBで充電できる仕様で、駆動時間は3日間。2泊3日ほどの海外旅行であれば充電もあまり気にせずに利用できるだろう。またiliではPCと接続することでアップデートにも対応。最新単語の追加、翻訳精度の向上のほか、対応言語の追加なども考えているようだ。先の担当者は「まずは、伝わらないことのフラストレーションを解消したい。是非、多くの方に表参道まで足をお運びいただき、iliを体験してもらえたら」とアピールしていた。
オンラインで50言語以上に対応した通訳デバイス