■スマホでレタスが育つ、IoT栽培キット
「やさい物語」は、沖縄セルラー電話が今春から発売を開始した家庭用IoT水耕栽培キット。水と電気、スマートフォンがあればリーフレタス、ハーブなどの葉野菜を栽培できる。栽培を開始してから1か月ほどで収穫できるという。定価は34,800円(税抜)。

内部にカメラやLEDを搭載しており、Wi-Fi、Bluetoothを介してスマホやクラウドと連携できるのが特徴。キット内の野菜の状態は自動撮影され、スマホのアプリで成長を閲覧できる。キット内の温度、水位に異常があった場合はスマホにアラート通知が届く仕様。過去の温度/ 湿度の履歴はグラフで確認できる。
やさい物語は、いわば野菜工場のミニチュア版。コンセプトの元になった野菜工場は、現在も沖縄県南城市で葉野菜の出荷を続けている。なお、そこで作られたレタスは県内のスーパーで購入できるほか、沖縄で人気のハンバーガー チェーン店「A&W」でも食べることができる。筆者も実際にA&Wを訪れて食べてみたが、新鮮でクセのない美味しいレタスだった。

■IoTで魚を獲る!? スマート漁業
KDDIでは、IoTの力で漁業をスマートにする取り組みも進めている。宮城県東松島市の地元の漁師とともに、2016年7月からトライアルをスタートさせた。
これまで漁業は”漁師の経験と勘”に頼っていた。例えば「シケの翌日には魚がよく獲れる」「水の色を見ればどんな魚がいるか分かる」といったような具合だ。これをデータを使って、科学的な側面からアプローチしていく。

海に浮かべるスマートブイは、天候や潮流の時間変化、水中の塩分濃度の日時変化などを計測してKDDIのIoTクラウドにアップロードできる仕様になっている。ところで「漁師の経験」「実際のデータ」「漁獲量」の相関関係は、果たしてどこまで明確にできるのだろうか。ブースの担当者に聞くと「ある程度、関係がありそうだというところまで分かってきました。ただ、実用化するまでもう少し検証が必要。今年度いっぱいはデータを取ります」との回答が返ってきた。その過程でブイ自体も、もう少しコンパクトな形状に進化させていくという。うまくいけば、漁獲量を正確にコントロールし、また漁業のノウハウを後進に伝承することにもつながる。そんなKDDIの取り組みに、漁業関係者も注目しているようだ。

■音でもVR化を実現した
個室の展示ブースでは「音場のズーム合成技術」が紹介されていた。これは360度カメラで撮影された映像に、臨場感のあるサウンドを付与するもの。管楽器奏者たちの輪の中心で撮影されたデモ映像の1つを見たが、クラリネットを大写しにすればクラリネットの音色が、フルートならフルートの音色が大きくなった。あたかも、実際に輪の中心に入って各奏者の音色に耳を傾けているような気持ちになる。
ブースの担当者は「VRは360度の視覚を再現しました。今回の音のVRにより、聴覚でも臨場感を体験できるようになりました。これは使い方のひとつの提案ですが、アイドルグループのライブの中心で撮影した映像なんてどうでしょう。推しメンの方を見れば、彼女の声が聞こえるわけです。将来的には嗅覚、触覚、味覚についても疑似体験を追求していけたら面白いのではないでしょうか」と話していた。

■SIMを活用したIoTセキュリティ
SIMをセキュリティ分野に活用する試みも紹介されていた。これは「SIMの堅牢性」(中身を見ることができない)、「柔軟性」(カスタマイズできる)、「メンテナンス性」(アプリや鍵を更新できる)というメリットを活用したもの。
消費者向けの製品に応用するなら、例えば、許可されたSIMカードを挿したスマートフォンでしか開かないセキュアな「スマートロック」が実現できる。ブースでは、NFCを介してスマホのSIM情報をやり取りし、施錠 / 解錠できるソリューションが紹介されていた。担当者は「SIMカードが、セキュリティの要になるわけです」と説明していた。

近い将来、内部にSIMが組み込まれた(いわゆるeSIM搭載の)製品が市場に出回ることが予期されている。そうした製品の多くはディスプレイを持たないだろう。このためセキュリティの管理方法にひと工夫が必要になる。そこで、こうしたSIMを活用したIoTセキュリティの需要が高まることが予想できる。
近年ではシェアリングエコノミーのサービスも拡大しつつある。例えば1つのクルマを他人とシェアするようなケースで、物理的なカギを貸し借りするのは非常に不便だ。そんな利用シーンでも、このようなSIMを活用したカギが利便性の向上に寄与するだろう。