都市部ではそれほど顕在化はしていないものの、地方の里山では、イノシシやクマ、シカなどに田畑を荒らされたり、ケガをさせられるなどの獣害が深刻化している。 背景には、猟師の高齢化や担い手の減少による絶対数の不足があり、減少傾向に歯止めがかかっていない。大日本猟友会が公表する資料を見ると、昭和53年には42万人以上いた大日本猟友会会員数(網・わな猟、第1種銃猟、第2種銃猟会員の合計)は、平成21年の段階で11万人強まで減少し、こと、第1種銃猟の会員数に関しては、昭和53年の41万人から、平成27年までには5万人前後への減少が予測値として算出されている。 5万人という数字だけを見れば、少なくないようにも感じるが、有害鳥獣駆除はボランティアの猟師が担っているだけに、要請に応じて即応できる人数はもっと少なくなり、さらに全国の里山単位で見ていけば、捕獲隊の編成が難しかったり、1人当たりの負担は年々大きくなる一方で、獣害対策に従事できる人は極めて限られている。 そうした中、ハンター不足を補うための最新のセンシング技術を活用した獣害対策用のシステムに注目が集まっている。アイニックスの害獣捕獲監視システム「わなタグ」もそうしたシステムの1つで、幕張メッセで開催されていた「第2回 IoT/M2M展 秋」にてデモ展示されていたので紹介していこう。 同システムは、加速度RF監視タグや赤外線RF監視タグを用いて、囲い罠や箱罠に、害獣が捕獲されると、電子メールで通知を行うというもの。これまでにもこうした罠の監視システムは存在していたが、各罠ごとに回線を用意する必要があり、ランニングコストが課題だった。 しかし、同システムに必要なのは中継器用の回線のみとなっており、タグと中継器の間は、920MHz帯の特定小電力無線により、通信するためラニングコストを大幅に圧縮することができる。また、中継器用回線は、1回線で最大20の罠の捕獲情報を集約し、送ることができるとのこと。 ちなみに中継器と各種RF監視タグとの通信距離は、見通し300mを基本とし、地形特性や設置方法によっては、100m位が目安となる。 これまでは、ハンターが定期的に罠の見回りを行いいちいち確認する必要があったが、同システムであれば、捕獲通知を受けた時や、電池交換(電池寿命は約3か月)の通知を受けた時のみで済むのが特徴だ。