一般社団法人ITヘルスケア学会代表理事の水島洋氏(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター 上席主任研究官)は、わが国における“ヘルスケアビッグデータ”とでも呼ぶべき個人の健康情報の集積と、その扱いをめぐる業界標準のガイドラインの策定などを、公益的な立場から学会がその役割を担う、すなわち“医療健康情報の公益管理団体”を目指すと宣言した。 前述の林信行氏の基調講演では、Apple社によるヘルスケアビッグデータの集積が一つの話題として提起された。国内を見渡せば、やはり多数の健康系企業や通信事業者、コンテンツプロバイダー等がヘルスケアデータの収集等を行っているが、その扱いをめぐるガイドラインもなければ、せっかく収集されたデータが各所に分散している状況ではビッグデータとしての価値が低下してしまう。さらに企業が収集したデータを、研究者が研究目的で利用することも簡単なことではない。 このため“学会”という公益性を活かし、ヘルスケアビッグデータ利活用の環境整備に向けて、(1)情報基盤の構築、(2)企業グループに依存しないデータ収集、(3)倫理委員会によるデータ管理、(4)データに関するガイドラインの策定、(5)オープンデータとしての提供、(6)データを利用した研究活動の推進、(7)データを財産とした財団との連携、を進めていくとした。 まずは「学会検診事業」(学会主導型の検診事業)と「健康情報の保全・流通についてのガイドライン化」を始動させていく。学会検診事業に関しては、第1弾モデル事業として「美肌菌ドック」の開発と運営をクリニカルパス(東京都杉並区)と提携して進めていく。 これは肌質を検査する自由診療検診プログラムである。さらに今後も提携先を増やし、学会と連携したさまざまな健診事業を進めていく。 一方、前出の深津博氏の講演にもあるように、ヘルスケア分野でのデータの収集や管理には多くの技術的、法的、倫理的課題があり、改正薬事法(医薬品医療機器等法)や改正が検討される個人情報保護法への対応も必要になってくる。 こうした課題については学会内に多数の検討委員会を設置し、有識者にも加わってもらい、対応を検討していく。データ利活用のガイドライン策定に向けては現時点で「ドラフトを作成した段階」にあり、2015~2016年には策定を完了したいとした。
【木暮祐一のモバイルウォッチ】第99回 これぞ、“駐車場IoT”! 駐車場検索アプリ「Smart Park」のビジネス展望とは 2016年10月20日 日頃、自動車を足代わりに使っている人には欠かせなくなりそ…