●市販車を極めるため車と人を鍛える--- ニュルブルクリンクとサーキットやテストコースとの違いは、例えばどんなことですか。辰己:ニュルの舗装路は、サーキットと比べたらドライでも滑りやすくなっています。アップダウンもあり、路面も平坦ではなくタイヤを常に接地させた状態で走行するのは難しいコースです。サーキットを走るGTカーやF1カーなどはタイヤの性能で決まる部分が多いのですが、ニュルでは、エンジン、タイヤ、シャーシ、サスペンションすべての総合力が高くないと勝てません。スプリントレースだと、ピーク性能を出すため耐久性が犠牲になることがありますが、24時間となると、さらに各部品の耐久性も求められます。 NBR 24Hに参加するWR STIは、ボディにカーボンなど使っていますが、ブッシュ類やドライブシャフトなど多くのパーツがノーマルです。レース用に開発すると耐久性や信頼性を十分にテストしなければなりませんが、その意味で開発時からテストを重ね、実績のある純正部品のほうが信頼できます。耐久性や信頼性はドライバーの安心感にもつながるので、90%のベストラップを安定して刻む必要がある耐久レースでは強力な武器となります。--- 昨年は24時間走り続けて先頭車両とは54秒差という、非常に惜しいタイムで優勝を逃しましたが、今年は優勝できますか。辰己:勝てると思っています。車、ドライバー、スタッフもそのためにこの1年やってきましたから。車については、ノーマルにこだわっていたHパターンのシフトから、ドライバーの要望もありシーケンシャルシフトに変えました。シフトチェンジの時間が短縮されるので、ドライバーはより運転に集中できます。ただ、レースは何が起きるかわからないドラマがありますので楽しみであると同時に不安もあります。●チームにとってはありがたくないドラマ--- レースの醍醐味--- 24時間のレースとなるドラマのたくさんあるかと思いますが、これまでのレースで記憶に残るドラマを挙げるとすれば?辰己:予想よりブレーキパッドが消耗してしまいレース中に交換することになったのですが、スケジュール外のピット作業にしたくなかったので、給油とタイヤ交換の時間にピットロード上でブレーキ交換を行ったことがありました。レギュレーション上、ピットロードでは人は車の下に入れません。給油が終わればピットアウトしなければなりません。その中、わざと給油時間を調整しながら4分でブレーキ交換作業を終わらせたのですが、あのときは回りのチームからも拍手が起きました。--- チームにとってはあってほしくないドラマですがファンや観客には耐久レースならではの魅力のひとつですね。辰己:はい。ファンなくてはレースが成り立ちませんから、ファンの声援や喜んでもらえることは非常に励みになります。そして優勝がファンを一番喜ばせることになると思って、がんばります。トヨタに加え、今年は日産・マツダも参加してくるので、日本でも非常に盛り上がるレースになると思っていますので、スバルはもちろん全日本チームで応援してほしいと思います。●現地にいけなくても応援できる 続いて吉田、佐々木両選手にも話を聞いてみよう。--- まずお二人の今年の意気込みから語っていただけますか。吉田:今年は新型WRX STIを投入します。すでにVLN2という同じコースを使った4時間耐久レースでも車の早さや安定性の手応えは感じられたので、勝つために参加してきます。勝負は水モノですが、とにかくミスを減らし1位を奪還したいと思います。佐々木:昨年はくやしい1年だったので、今年はぜひ勝ってよい1年にしたいですね吉田:新型は去年の車より1周あたり15秒くらい速くなっているので可能性はあると思います。不安があるとすれば、もらい事故や赤旗・黄旗など不測の事態ですかね。
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