■お菓子作りを支えるデータベース 藤田氏の話を聞いていると、「面白い」という言葉が随所に現れ「儲け」という言葉がめったにでてこない。「僕はお金儲けということを考えたことがないです。こうしたら面白いんじゃないかということをやっただけです。従業員には原価がどうだとか言うんですが、僕自身はあまり考えていないです。結果的に伸びただけ」と話す。とはいえ、美味しさを軸に面白いことができるようになる下地続りはされていた。自身が商品を作ることに集中できる環境は、店舗を作る前に構築されていたのだ。 独立する前、藤田氏が当時24歳だったころに所有していたコンピュータはPowerBook Duoだった。レシピをまとめたいと思い、コンピュータに興味をもちはじめたのがきっかけだ。「HOTDOGという雑誌に、“ほこりのかぶったマッキントッシュは存在しない”みたいなことが書かれていて、すげ~なコレ、どういうことなんだろと思って読んでいたら急激に興味が湧いてきた」と振り返る。東京の要町に住んでいた藤田氏は池袋に行くまでの間に見かけたゼロワンショップに通い続けた。しかし、50~60万するコンピュータは手が届かず、そのまま購入せず、「車を買うような勢いで40万円を出して買った」のは後のことだ。 ここからの藤田氏の経歴が変わっている。それまで中村屋やハワイのレストランで働いていたにもかかわらず、リレーショナルデータベースに興味を持ち、ACIジャパンという会社にカスタマーサポートとして就職する。「レシピをまとめるのはFileMakerでやってたんですけど、もっと高度なやつはないかと思っていた時に4th Dimension(4D)というデータベースソフトに出会いました。でも、全然わかんないんですよ。全然わからないまま使っていて、勉強するにはそのソフトを出している会社に入っちゃうのがいいと思って応募したんです」。 ディベロッパーのサポートをやるうち、当然ソフトに詳しくなっていった。今、店舗を管理しているデータベースはすべて藤田氏が作ったものだ。原材料管理、レシピ、単価などの基本情報はもちろん顧客管理のシステムも搭載している。そればかりではない。ポスレジ機能、従業員のタイムカード機能も入っている。「自分が独立した場合には、売上げの管理やすべてのことをやっていかなければいけない。それを全部まとめてやってくれるようなものがあれば、僕は菓子を作れるなと。現在は(このシステムで)すごく手間を省くことができています」「原材料の発注する場合、電話とかファックスで発注しないでこのシステムからやれば履歴は全部残ります。あとから何かに転記する必要がないわけです。また、作ったものにシールを張らなければいけないのだったら、そのシールを印刷した枚数がそのまま記録されればいいわけです」。単に機能を追加していくのではなく、省力化を進めながら、効率を追求していった形だ。商品が売れて知名度が上がってくるとデータベースの企業が売り込みにやってくることもあったが、皆藤田氏のシステムを見て帰っていったという。現在、藤田氏のシステムは6ヵ所で使われている。なお、同システムの構築はしばらく藤田氏ひとりでやっていたが、4D時代の仲間を雇い更新を続けているという。 では、藤田氏がフラノデリスに抱いている課題は何なのだろうか?「それは送料700円というのをいかに安くするかです。セット商品を販売したり、北海道という地にあり固定費が安いのである程度カバーできるのではないかと考えています」。藤田氏の目標は、フラノデリスをもっと身近なものにすることだ。気軽にいつでも美味しい商品を注文できる存在だ。「これからはもっと通販は普通になってくる。注文したら商品は翌日には届く。みんなの近所にあるケーキ屋さんのような、空気のような感じになれたら面白いですよね」。