もう1つ、オートモティブ/交通システム部門で優秀賞を受賞したのは、名古屋大学 大学院情報科学研究科 附属組込みシステム研究センター(NCES)だ。同センターは、オープンソースの組込み向けリアルタイムOS(RTOS)の開発を推進する「TOPPERSプロジェクト」(Toyohashi Open Platform for Embedded Real-Time Systems)で知られている。受賞対象はAUTOSAR仕様に準拠した「TOPPERS/ATK2」(Automotive Kernel Version2シリーズ)だ。
近年、欧州車載システムの標準規格「AUTOSAR」(AUTomotive Open System ARchitecture)の仕様が広く採用されるようになった。しかし、AUTOSARの仕様は膨大で複雑で曖昧さも残っている。また実装時のオーバーヘッドの問題もあり、まだ日本では導入が進んでいないのが実情だ。そこで、これらの問題を解決するために、NCESは複数の企業とコンソーシアム型の研究組織を立ち上げ、「TOPPERS/ATK2」を共同開発し、オープンソースとしてTOPPERSプロジェクトで公開した。デモブースではスズキの自動車が展示されていた。実は、この自動車には、すでに「TOPPERS/ATK2」が実装されているそうだ。
このほかにもスマート系で複数のアワードが各社に贈られた。スマートエネルギー部門では、Spansion Inc. と九州工業大学がアワードを取った。両者は、太陽エネルギーで半永久的に駆動するエナジーハーベスティングシステムを開発。システム開発に際しては、まつもとゆきひろ氏の「mruby」(組み込み向けの軽量Ruby)を産学連携で採用し、バグを減らして生産性を高める新しいソフトウェア開発を進めた。
スマートヘルスケア部門では、ラピスセミコンダクタがBluetooth Low Energy LSI・ML7105とモジュールの組み合わせで優秀賞を獲得。市販のコイン電池で2年間使用できる低消費電力を実現し、ウェアラブル・ヘルスケア機器への応用が期待できる。一方、スマートアグリ部門ではデータテクノロジーが優秀賞を取った。同社は、農業クラウド向けのオールインワン遠隔監視制御システム「みまわり伝書鳩」&センサーユニットを開発。温湿度、風速・風向、雨量、紫外線、照度などを観測できる簡易気象観測ユニットから、3G通信で管理サーバに計測データを蓄積し、PCやスマートフォンなどで情報を閲覧できる。なおロボティクス部門に関しては、残念ながら今回は該当製品がなかった。次回の入賞に期待したい。
《高木啓》