2月7日、川崎市のシネマコンプレックス、チネチッタにて「第67回毎日映画コンクール」の授賞式が行われ、『おおかみこどもの雨と雪』でアニメーション映画賞を受賞した細田守監督と、『火要鎮(ひのようじん)』で大藤信郎賞を受賞した大友克洋監督が揃って登壇した。2012年7月に公開されたアニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』は昨年11月末で観客動員341万人、興行収入41億円を突破したヒット作。本賞の講評でも「なじみ深い変身譚(たん)の形式を使い、子供たちの、動物にも人間にもなるという設定を存分に活用して、格別のリアリティーが吹き込まれた。」と高く評価された。一方の短編アニメ『火要鎮』はオムニバス企画「ショートピース」の一遍で、現時点では未公開ながらも第16回メディア芸術祭アニメーション部門の大賞を受賞するなど、公開前から期待が高まっている。本賞の講評では「名所絵の景色・風俗を導入として人物がCGで動き出す展開など、新旧文化の融合が実現されている。(略)むせぶような煙と熱が感じられるような大火事の激しいビジュアルは、引き裂かれた男女の情念そのもの。情緒を映像化しぬいた点で、まさに日本人でなければ描けない作品と言えるだろう。」と絶賛された。奇しくも同じ都内の吉祥寺近辺を拠点として活動しているという両監督。これまでプライベートな場で顔を合わせることも何度かあったとのことで、授賞式後に行われた囲み取材では、緊張の面持ちを見せつつも和やかなムードで進行した。以下、アニメ界をリードする両監督の貴重な対面としてその内容を紹介したい。細田守(『おおかみこどもの雨と雪』監督)――受賞の感想は?「アニメーションに携わる者なら誰でも憧れている賞なのでいただけて光栄に思います。やはりこのトロフィーを持ちますと、制作途中のいろんな苦労をスタッフとともに乗り越えたことが思い出されます。持ち帰ってスタッフ、キャストの面々と喜びを分かち合いたいですね」――大友監督の印象は?「すごく光栄で、大友監督と立たせていただいていること自体すごく緊張が続いてまして、またとない機会だなという時間を噛みしめております。もう6時間ぐらい緊張が続いております(笑)」――『火要慎』の感想は?「今回の『火要鎮』の映像はいままでアニメーションを作っている人たちがやりたくてもやれなかったすごい高い技術で実現されていて、つまり服の模様が全部人物の動きに追尾されている。そういうことがいままでのアニメーションではなかったことなので、大友監督でついにアニメーション界長年の夢が実現したことがすごいですね」大友克洋(『火要慎』監督)――受賞の感想は?「(大藤信郎賞は)前にも一度『MEMORIES』でいただいたんですけど、またいただけて大変嬉しいです。そんなことになるとは思わず作っていますんでね。でも評価してもらえるのは嬉しいですし、作ったスタッフたちの代表で受け取っているようなものなので、みんなに見せたいと思います」――細田監督の印象は?「僕も昔は若いと言われたんですけど、いまはこんなふうになっちゃって、(細田氏は)つぎの人なのでがんばってほしいと思います。あとは後進に譲らないといけないんですけど、もう少しいろんな賞が欲しいなと思うので、もう少しがんばろうかなと思います(笑)」――『おおかみこどもの雨と雪』の感想は?「アニメーションというジャンルがだんだん新しくなっている感じがしますね。昔は冒険ものだったり、萌えものだったりするんですけど、(『おおかみこどもの雨と雪』は)監督が自分の世界観をアニメで表現できるようになっている感じがして、見ていてすごく新しい感じがしました。アニメーションってスポンサーとかお客さんとかいろいろあるんで、作品として個性を持って作るのがなかなか難しいところがあるんですね。でもいまはそういうなかでも、自分の世界観を作れるようになっている。技術的にも進歩しましたし、若いアニメーション作家がどんどん自分の世界観を作っていけている感じがしますので、この人たちが次の世代を引っ張っていくんだと思います」[野口智弘]毎日映画コンクールhttp://mainichi.jp/enta/cinema/mfa/おおかみこどもの雨と雪http://www.ookamikodomo.jp/index.html火要慎(「SHORT PEACE」公式サイト内)http://shortpeace-movie.com/ 『火要慎』トレーラー
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