このTwilioCON 2012において、16日の基調講演で主催企業であるTwilioのCo-FounderでありCEOであるJeff Lawson氏が、KDDIウェブコミュニケーションズとの業務提携について発表した。基調講演を終えた翌日の17日にCEOインタビューが行われたので、その内容をお伝えしたい。なお、インタビューの回答は質問内容によって一部、同社 Business Development, Senior Manager, Brian Mullen氏が答えている。
――まず、Twilioという会社について簡単にお話いただけますか。
Jeff Lawson氏:Twilioは2008年に創設された会社です。自分は15年の間、コミュニケーションの分野でソフトウェア開発に従事してきました。そのころから音声通話によるコミュニケーションアプリに興味を持っていましたが、当時は専用のハードウェアが必要だったり、利用できるツールなどが少なく非常にフラストレーションを感じていました。もっと簡単に通話ができるアプリケーションが作りたいと思っていたところ、各種のAPIサービスの普及、Amazon AWSのようなクラウドプラットフォームの出現、スマートフォン市場の拡大などがあり、それが今なら実現できると思ったのです。
――今のところビジネスは成功しているようですね。
Jeff Lawson氏:はい。現在では15万人の開発者がTwilioのAPIを使ってさまざまなアプリケーションを開発しています。TwilioCONも今年で3回目ですが、昨年は300人程度の参加だったものが今年は1,000人を超えています。2011年には英国、今年の初頭にはEUの17ヵ国ともビジネスを始めています。現在40ヵ国でIP接続可能な電話番号を購入でき、北米から通話を利用できる国は190にも上ります。
――どんなアプリケーションに利用されているのですか。
Jeff Lawson氏:たとえばパーキングメータと連動させ、制限時間が近づくと電話をかけてくれるアプリケーション。カンファレンスコールのしくみを利用し、スマートフォンで通訳をしてくれる人を探して、実際に通訳してくれるアプリケーション、などがあります。また、iPadでコールセンターのシステム一式を作ってしまった人もいます。あとは、基調講演などでも発表があった、Huluのカスタマーセンターのシステム、UBERというハイヤーの手配システム、Walmart Labsでの採用、Zendeskというメールベースのチケットシステムに音声通話機能を統合したりと、じつに様々な企業やStartupsが利用しています。
――開発者人口で15万人は確かに多いと思います。Twilio APIの人気の秘密はなんでしょうか。
Jeff Lawson氏:Twilioのポリシーはあくあまで開発者目線を大事にしています。今回のカンファレンスではTwilioの製品について、TEST Credential、TwilioクライアントのWeb RTC対応、Usage API、Trigger API、SIPインターフェイスなど7つの新しい発表をしていますが、どれも利用者=開発者の視点でどんな機能が喜ばれるか、どんな機能のニーズがあるのかを考えて開発、投入しています。その人気を示す指標として、programmableweb.comというサイトがあるのですが、ここに開発者から支持されている各種APIのサービスのランキングが掲載されています。Twilio APIは7位と12位(Twilio SMS)にランキングされていますが、この2つを合わせると5位のポジションになります。ちなみに1位はGoogle Mapsです。このように多くのエンジニアに支持されているのは、TwilioのAPIが「ちゃんと動く」からです。
Jeff Lawson氏:確かに米国でも、家族や友人に連絡をするシチュエーションでは音声からテキスト(メール、SMS)に置き換わっています。しかし、ECサイト、カスタマーサポート、チケット予約、ソーシャルネットワーク、社内コミュニケーションなど、ビジネスの分野ではAPIを使った「スマートコール」がどんどん広がっています。全体として1日あたりの通話数は5億コールと急激に伸びています。
Brian Mullen氏:この質問は私が答えます。KWCは、日本国内においてキャリアのエコシステムを持っていることや、すでにboundioのような音声通話のAPIサービスを開始していることなど、Twilioの戦略や哲学と共通するものが多かったからです。また、APIサービスのターゲットを中小規模の企業としていた部分もわれわれの戦略と一致します。KWCの担当者とは昨年の同じカンファレンスで知り合ったのですが、この1年でお互いさまざまな議論を繰り返し、同じビジョンを担当者レベルでも共有できたのも大きいですね。
――日本市場でのTwilioのビジネスについて、2社の役割分担はどのようになっていますか。
Brian Mullen氏:Twilioでは、KWCのことを日本でのクラウド Voice API市場のエキスパートとしてとらえています。KWCには日本市場での営業とマーケティングとKDDIのキャリアネットワークを担っていただきます。具体的なAPI製品のローンチはこれからですが、実際のAPI製品の提供(powering)をTwilioが担当します。
――最後に日本の開発者に向けたメッセージをお願いいたします。
Jeff Lawson氏:日本の開発者がTwilioのAPIで素晴らしいアプリケーションを開発してくれるのを待ちきれません。楽しみにしています。 《中尾真二》