トヨタ自動車の友山茂樹常務役員は、CEATEC2012で一般公開している超小型1人乗り電気自動車をベースにしたコンセプトモデル『Smart INSECT』について、スマートフォンに4つのタイヤがついたようなものと解説する。‐‐‐‐:Smart INSECTは2002年に発売された『WiLLサイファ』のコンセプトを踏襲したものですか。友山常務(以下:友山):コンセプトは一緒ですね。ただ、もう車自体のメカニズムはクラウンドなんです。この車の中には高価なコンピューターなどは何もない、みんなクラウドでやっています。だから、この車の価値というのはクラウドの中にあります。高度な音声認識とか、ユーザーの利用履歴のデータそういったものをクラウドの中に入れていって、(オーナーに)先回りして判断する。この車の独自のものとしてはデザインや走りがありますけど、ただ、これまでのように非常に豪華な車とか、ハイパフォーマンスの車とは少し違った、『iPhoneに4つのタイヤがついて、これでどうだ』という感じですね。‐‐‐‐:そうしますと、この車自体は市販化というより、使い方の提案ということですか友山:この車に入っているいくつかの技術は、1~2年以内にトヨタ車に搭載されてきます。例えばバーチャルエージェント、これはコンシェルジュみたいなもので、オーナーと対話することで、オーナーの意図を理解して、適切なサービスや車の操作を代行するという形ですね。この超小型EVというものは、それなりに用途はあるんですけど、こうしたものにITが融合することによって、その商品価値が、大きな車とは違うものが出てくるという期待感が我々にはあるんです。新しい価値観が出てくると思っているんですよね。‐‐‐‐:Smart INSECTに込めたトヨタとしてのメッセージは何ですか友山:人や社会と対話する車、もしくはそういうサービスを提供したい、それをミニマムに表現したものがこれです。これがトヨタでいう『次世代“つながる”サービス』のコンセプトであるわけです。もちろん言葉でも対話するし、モーションセンサーを通じても対話する。例えば、車がオーナーの顔を認識するとあいさつしてくれることなどもそうです。‐‐‐‐:展示しているSmart INSECTは実際に動きますか友山:もちろん動きますし、近い将来は、ある程度自動運転させたいと考えています。またトヨタスマートセンターで音声情報などを認識するバーチャルエージェントも本当のクラウドで動いてます。だから色んなことができます。例えば「おなかが痛い」というと、近くの病院を探してきてくれますし、駄目出しすれば『どうもすいません、もっと勉強してまいります』といった具合に、会話をできる限り継続するようにチューニングしています。またSiriなど色々な音声認識アプリがありますが、彼らと違うのは車の中の環境で使えるように開発している。それはどういうことかというと、車のノイズに対してはフィルタリングをかけていたり、『窓を閉めて』と言えば車の窓を閉める動作をします。でもSiriに『窓閉めて』と言ったら、逆に『窓とは?』と聞いてきますよね。だから一番の特徴はオーナーの利用履歴をもとにエージェントが自分で判断するということです。例えば『いつものルート』と月曜の朝7時に言えば、それは絶対に行先は会社だろうと判断して、目的地を自動で設定してくれる、そういうところが我々車屋がやる音声認識であり、バーチャルエージェント、クラウドなんです。‐‐‐‐:WiLLサイファで目指していたものに、技術が追い付いてきたということですね友山:はい、ライフワークだと思ってやってますから。
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