「Mobile World Congress 2011」の基調講演に、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏が登壇した。孫社長は、世界の携帯電話事業者は共通の“憂鬱な現実(Depressing Reality)”に直面しており、これを乗り越えて収益を上げるには、型にはまった従来の携帯電話サービスから抜けだし、モバイルブロードバンドに軸足を移すしかないと説明した。
“憂鬱な現実”とは、携帯電話が1人に1台以上の時代を迎えたことにともなう今後の収益性の悪化を指している。2010年時点で、世界の携帯電話契約数は約54億に達しており、普及率は約8割となっている。わずか10年で加入者が7倍にも増えたわけだが、この先そこまでの劇的な増加は期待できない。しかも、1加入者から得られる平均収入(ARPU:Average Revenue Per User)は年々低下する傾向にある。孫社長は、このまま今後5年が経過すると、加入者は1.5倍になるが、ARPUは3分の2に低下すると見積もる。すなわち、両社をかけ合わせると、5年後も売り上げはまったく伸びないということになる。しかも、ネットワークのトラフィックは爆発的な増加を続けており、設備投資は続けなければならない。