インテルが目指す「テラスケール・コンピューティング」。単にコンピュータを高速化させるだけではなく、その用途や、マルチコアCPUにおけるソフトウェア開発に関する研究も進められている。 14日、「インテル プラットフォーム技術セミナー2006」にて、米インテルのコーポレート・テクノロジー統括本部マイクロプロセッサー・テクノロジー・ラボ プログラミング・システム・ラボ ディレクター兼シニア・プリンシパル・エンジニアのジェシー・ファン氏は、「テラスケール・コンピューティングにより実現される世界とその要素技術」と題する講演を行なった。 同氏はまず、テラスケール・コンピューティングを簡単に定義づけた。演算性能がTFLOPS級(毎秒1T命令以上)、データセット・サイズがTB級で、主要な用途は“RMS”とした。RMSとは、ジャスティン・ラトナー氏も言及していた“Recognition”“Mining”“Synthesis”の頭文字だという。さらに、同氏は「テラスケール・コンピューティングは、単にSMPをオンダイで実現しただけのものではない」とし、テラスケール・コンピューティングでは、プラットフォームおよびソフトウェアでの支援が不可欠であることを強調した。 続いて同氏は、テラスケール・コンピューティングに関連する研究開発プロジェクトが全世界で100以上実行中であることを紹介。インテルの取り組みの一端として、トランザクショナル・メモリ(Transactional Memory)やメモリとプロセッサの3次元実装(3D Stacked Memory)などの技術を明らかにした。 さらに同氏は、マルチコア化に伴ってソフトウェア開発が困難になることを指摘した。マルチコア環境でパフォーマンスを高めるためには、ソフトウェア開発の段階で処理の並列性を抽出し、それを正しく実行できるように記述する必要があるが、これを実現するにはツールや開発言語のレベルでの支援が必要だという。同氏は“Data Parallel”や“Speculative Multithreading(投機的マルチスレッディング)”という考え方を紹介し、ソフトウェア開発環境にも今後大きな変化が起こることを示唆した。 最後に同氏は、マルチコア・プロセッサで単にコアの数を増やしていっても性能は16コア辺りでピークに達し、それ以上コアを増やすと逆に性能低下が起こることを紹介し、その上に「ハードウェアによるスレッド・スケジューリング」「キャッシュの改善」「新しい命令」といった周辺的な技術革新の成果を積み上げることで初めて大幅な性能向上が実現されるのだという認識を示した。