與真司郎、2000人の前でゲイを公表した日の心境は…エッセイ『人生そんなもん』の「はじめに」全文公開 | RBB TODAY
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與真司郎、2000人の前でゲイを公表した日の心境は…エッセイ『人生そんなもん』の「はじめに」全文公開

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與真司郎のノンフィクションエッセイ『人生そんなもん』 撮影/嶌原佑矢(UM) (C)講談社
  • 與真司郎のノンフィクションエッセイ『人生そんなもん』 撮影/嶌原佑矢(UM) (C)講談社
  • 與真司郎のノンフィクションエッセイ『人生そんなもん』 (C)講談社
  • 與真司郎のノンフィクションエッセイ『人生そんなもん』 (C)講談社
  • 與真司郎のノンフィクションエッセイ『人生そんなもん』 (C)講談社

 4月16日に発売される與真司郎のノンフィクションエッセイ『人生そんなもん』(講談社)より、「はじめに」が全文公開された。

 AAAのメンバーとして3年連続4大ドームツアーを行い、ソロとしても精力的に活動してきた與。2023年7月には自身が同性愛者であることを約2,000人のファンの前で公表し、世の中に大きなインパクトを与えた。


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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

 同書ではそんな自身の半生を振り返り、カミングアウト後に感じていることを赤裸々に告白。「はじめに」の部分では、スピーチの内容を何度も修正していたカミングアウト前夜と当日の心境を、時系列と共に明かしている。

撮影/嶌原佑矢(UM) (C)講談社

■「はじめに」 全文
カミングアウト前夜と当日の心境

2023年7月26日水曜日、僕はLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて、約2000人のファンの前で、ゲイであることをカミングアウトする。今は前日7月25日の深夜、都内の仮住まいの家には国内外の関係スタッフさんがいて、明日読み上げる原稿の最終調整を行っている。自分の言葉と行動が多くの人にとっての助けとなり、少しでも励ましになってほしい。その一心で目の前の原稿に向き合う。何ヵ月も前から準備はしていたけれど、書いては消してを繰り返している。たった一言のニュアンスの違いで誤って伝わってしまう。その後悔だけはしたくないからだ。なんとしてでも100点の原稿を作りたい。今、この場には緊張感が漂い、これまでに経験したことのないストレスを感じる。僕もスタッフさんもここ数週間ほとんど寝ずに準備をしてきた上、仮住まいの家が狭く、窮屈に感じる。さらには、明日上手く世間に伝えられるのかという不安がのしかかっている。午前4時前、ようやく打ち合わせが終わる。スタッフさんが帰り、お風呂に入った。布団に入る前、寝られないだろうと思い、普段は飲まない睡眠薬を飲み、昔の写真を見返す。それらを見ていると、ゲイであることを隠して過ごしていた日々がフラッシュバックして、つらい気持ちになった。でも、「もし非難されて日本に居場所がなくなっても、残りの人生を海外で過ごせばいい」と頭を切り替え、布団に入った。本番当日、8時に目が覚める。起きた瞬間に「やるしかない」と思った。ここまで来たら逃げられない。来てくれるファンもこの日のためにスケジュールを空けて、僕がどんなことを発表しようとも、受け止める心構えをしてくれているに違いない。会場の準備はもう進んでいるだろうし、関係者もこの日のために準備をしてくれている。テレビや新聞をはじめとしたメディアもくるし、カミングアウト前から密着してもらっているハリウッドのドキュメンタリーチームもスタンバイしている。「後戻りはできない」と初めて実感した。当日の朝にようやく覚悟が決まったのだ。
朝食にバナナとゆで卵を食べて、支度をする。10時半頃にマネージャーが車で迎えに来て、11時にLINE CUBE SHIBUYAに会場入りした。その場にいるスタッフさんを含め、会場に緊張感が漂っているのがすぐにわかる。自分自身も緊張しているが、伝染させないように明るく振る舞った。「緊張してるよ~」とふざけて言って、なんとか場を和ませようとする自分がいる。「せっかくここまでスタッフさんが準備をしてくれたんだ。仲間も駆けつけてくれている。できるだけ普段通り振る舞おう」と心の中で自分に言い聞かせる。そしてリハーサルが始まる。照明の確認をして、台本を一通り読む。事務所から独立して初のイベントだから不慣れなことも多い。今まで一緒に働いたことがない人とも働く機会となり、カミングアウトだけではないストレスも多かったことを思い出す。

リハが終わり、あとは本番を迎えるだけとなった。待機中、多くの人からのメッセージが届く。アメリカ人の友人たちからも「Shin、頑張って!」という連絡がいくつも届いていた。見渡すと昔からずっと一緒だったマネージャー、スタイリスト、ヘアメイクなど多くのスタッフさんがいる。海外から友達も駆けつけてくれている。この日は〝仕事として〟ではなく、〝仲間として〟助けてくれている気がした。仲間がいれば絶対に大丈夫だと思えた。登壇寸前、静かに立っていられず、ぐるぐるとその場を歩き回る。まったく落ち着けない。昔からの友達でもあるドキュメンタリーチームのスタッフさんが視界に入る。「もう無理だ。家に帰ってもいいかな」とジョークを言う。「お前ならできる」と返ってきた。1秒ごとに、「もう本当に無理だ」と「俺なら大丈夫」という両極端な感情が行ったり来たりしている。言いづらいことを言う時のもどかしさに似ている。何かが喉元に詰まっている感じ。でもこれさえ言えば、この先カミングアウトをする必要はない。ステージに出てしまえば、後はどうにかなる。これで今までのつらいことはすべて終わる。「壇上に行きたくない」という気持ちに、「終われば楽になれる」というそれを覆い被せた。

ついにその瞬間が来た。立ち位置に向かって歩く。ステージに立つことには慣れているはずだが、感じたことのない緊張が押し寄せる。目の前には約2000人のファンがいて、その後ろにはメディアがいるのがうっすら見える。「ここで今から言うんや……。うわ……『ゲイ』、その一言が言いづれぇ……」そう思った。それ以外は問題なく言える気がする。でも〝ゲイ〟という言葉だけはどうしても言いたくない。

それでも今ここに立っている以上、もう後には引けない。そしてスピーチ原稿を開き、自らがゲイであることをカミングアウトした。

(C)講談社
(C)講談社
(C)講談社
《ハララ書房》
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