今週も、秒で終わってしまった……。ノワール、サスペンス、アクションあたりのジャンルが好きな筆者にとって、最近の一番の楽しみが、毎週水曜日更新の韓国ドラマ『殺し屋たちの店』(ディズニープラス スターで毎週水曜日2話ずつ配信独占配信/全8話)だ。
本作は、主人公チョン・ジアン(キム・ヘジュン)が、自死した叔父チョン・ジンマン(イ・ドンウク)が残した殺し屋向けECサイト「マーダーヘルプ」を引き継ぐ、という物語。そもそもジンマンの裏稼業のことを知らなかったジアン。叔父の正体を突き止めながら、業種柄、命懸けで遺産相続をする羽目になってしまう。今回は、今週配信された3・4話を大まかに振り返ってみたいと思う。
(以下、ネタバレあり)
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■筆者プロフィール
山根由佳
編集者・校正士・写真家のマネージャーなど複数の草鞋を履くフリーライターであり、海外ドラマ&映画の熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。X(Twitter):@ymndayo
山根由佳
編集者・校正士・写真家のマネージャーなど複数の草鞋を履くフリーライターであり、海外ドラマ&映画の熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。X(Twitter):@ymndayo
ジンマンの狙い通り、自然と強くなっていったジアン
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初回2話同様、3・4話も現在と過去の物語が往来する。最初に描かれるのは、ジアンが17歳の頃。家の補修工事を理由にジアンを智異山へと連れ出した叔父ジンマンだが、足をくじいて高熱を出してしまう。洞窟に避難するも携帯電話は圏外で、ジンマンはジアンを一人で待避所へ向かわせる。しかし、待避所の扉の先にいたのは人肉を貪る犬たち。ジアンは絶体絶命となるが、念のためとジンマンに持たされたパチンコを使って自らの身を守る。そのすぐ後、すっかり回復したジンマンが銃を携えて現れ、無事帰路に就く。―実はこれ、すべてジンマンのシナリオ通り。あえて姪を窮地に陥れ、強くさせようと画策したのだった。後日、自らパチンコの練習をしはじめたジアンに対し、ジンマンは自然な流れで銃の扱いを教えていく。
そして現在。S級の殺し屋ソ・ミンヘ(クム・ヘナ)が再び家に乗り込んでくるが、ジアンの味方であることが判明。敏腕スナイパーのイ・ソンジョ(ソ・ヒョヌ)からの攻撃でミンヘが怪我を負って追い詰められる中、ジアンはジンマンからの学びを思い出し、反撃に成功する。しかし止まぬ攻撃。ミンヘの援護下、ジアンとその友人ペ・ジョンミン(パク・チビン)は倉庫へ移り、地下にあるジンマンの本当の職場=殺し屋のショッピングモール「マーダーヘルプ」へと足を踏み入れる。
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そこで待ち受けていたのは、“ブラザー”と名乗る覆面マスクの男(イ・テヨン)。ジアンに対し、ジョンミンを拘束しろと命じるが、ジアンはブラザーを羽交締めにして気絶させる。思春期の頃、「俺の顔を一発でも殴れたら独り立ちさせてやる」というジンマンの言葉に奮い立ち、ジンマンの仕事仲間パーシン(キム・ミン)から習ったムエタイが役に立ったのであった。
ブラザーは「マーダーヘルプ」の従順な従業員であり、問答無用でジアンに従うことが分かっていくが、彼のジョンミンへの敵対心は依然として剥き出しのまま。「ジョンミンのせいで社長が死んだ」といった主張も始めるが、ジアンはジョンミンを信じることに。ジョンミンとそのまま地下に留まり、ミンヘに銃弾と薬を届けるため、ブラザーを地上の“戦地”へ送り出す。
生前の叔父と姪の楽しいエピソードもお披露目に
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「やったー! イ・ドンウクが主演だ!」と思って『殺し屋たちの店』を観始めた身としては、本作の設定に対して微妙な心持ちだった。なぜなら彼が演じるジンマンは、物語冒頭でお亡くなりになるからだ。もちろんあらすじを読んでから再生しているので驚いたりはしなかったのだが、1話目でのジンマンの葬式シーンやジアンが打ちひしがれる姿などを見て、「もう生きている人物としては登場しないのか」と少し残念な気持ちに。続く2話目も、叔父と姪のわだかまりが解消される感動的なエピソードが映し出され、今後描かれる2人の過去の物語も切ない余韻を残すものばかりになりそうだと予想していた。
しかし意外にも、3・4話の回想シーンは、ほんのりコミカル。数時間前まで酷い体調不良だったことをジアンに指摘されたジンマンが「大自然の中だから早く回復した」と下手な誤魔化しで口をモゴつかせたり、ジンマンがジアンのデート相手を正論で撃退したり(そんなことしなくても、こんな素敵すぎる叔父がいたら自然と萎縮して立ち去る可能性大だが)、一人暮らしの権利を得るために攻撃を仕掛けるジアンをジンマンがサラリとかわしたり……常に一枚上手で飄々としているジンマンと、思春期で感情をストレートに爆発させるジアンの対比にクスッとさせられる。4話冒頭では黒幕ベイル(チョ・ハンソン)が登場する回想シーンがあり、今後再び暗い過去に焦点が当たることは間違いないだろうが、叔父と姪の“ぶつかる時もあるけれど楽しく過ごしていた幸せな日々”も、ぜひまたお目にかかりたいところだ。
役者魂炸裂! 説得力あるアクションシーン
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物語の大前提を伝える1・2話を経て、3・4話からはようやっとスタイリッシュなアクションを堪能することができた。配信直前に開催された記者会見では、「リアルさにこだわった」(イ・グォン監督)と、アクションシーンが話題の中心に。ジアン役キム・ヘジュンはムエタイ、ジンマン役イ・ドンウクはミリタリーアクション、ベイル役チョ・ハンソンはショートナイフアクション、ミンヘ役クム・ヘナはグラップリングなど、それぞれ厳しい練習を重ねた旨を振り返っていた。
中でもヘジュンは、体力作りがきつすぎて出演辞退を考えるほどだったと打ち明けていたが、その努力はしっかりと実を結んでいる。最初はへっぽこだったジアンが師匠の指導を受けてパワーもスピードもめきめきと上達していくシーンの説得力は半端ではなく、その懸命な姿によってジアンというキャラクターの魅力もアップしているのだ。師匠に実力を認められた“その後”の姿が、今後の楽しみの一つである。
と言いつつ、3・4話のMVPはミンヘ役クム・ヘナだ。殺し屋たちを倉庫に一斉に集め、ひっそりと上から見下ろす。一瞬で相手の後ろに回り込み、最小限の動きでとどめを刺す。大御所らしきガタイの良い男・キム先生との戦いでは、パワーが劣る分、スピードと知恵で対抗。まるでネコ科の野生動物を思わせる、しなやかで俊敏な姿に惚れ惚れした。ちなみにヘナは、すべてに秀でた役柄を演じるために様々なトレーニングが必要で「トライアスロンをしているような感覚だった」とのこと。その役者魂が、韓国ドラマ史に爪痕を残す、超一流の殺し屋キャラを生み出したと言えるだろう。
新たな謎たち
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謎だらけで始まった本作だが、今週の配信で新たな不明点が発生している。「任務の遂行中に民間人を殺した」と思われるベイルとジンマンの歴史、ミンヘがジンマンのことを“お兄さん”と呼んだ意味(“オッパ”の意味合いなら、交際していた可能性もある)、ジアンが暮らし始める前から倉庫地下にいたというブラザーの正体、旧知の知り合いに思われるミンヘとブラザーの関係。そして、ジンマンが死んだ理由に関与しているであろう例の人物の思惑……。果たして、全貌が分かるのは来週の5・6話か?
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