ノ・チャッキ(チョン・リョウォン)とチャ・シベク(イ・ギュヒョン)は、2人に共通の接点がある人物が殺される連続殺人事件に巻き込まれ、チャッキは犯人がシベクなのでは…と疑いの目を向けていた。
果たして真犯人は誰だったのか。最終話で怒涛の展開を迎えた本作が、どのような結末を迎えたのか紹介したい。(以下ネタバレあり)
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連続殺人事件の裏に隠された恐ろしい過去
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結論から言うと、シベクは犯人ではなかった。餃子屋の店主、シン・チシク(キム・サンホ)が殺人を企て、従業員のハン・ダルジェ(チョン・ミンソン)に殺害させていたのだ。なぜこんなことが起きてしまったのか。それは過去に起きたおぞましい出来事が原因だった。
最終的に殺害されてしまったが、チャッキを可愛がっていたいたチャン会長は、根っからの悪党だったということが明るみになった。
時は1989年にさかのぼる。当時のチョンハ市では、労働者が自身の権利を訴えると逮捕され、拷問を受けるというとんでもないことが行われていた。それを率先して行っていたのが「キム先生」と名乗っていたチャン会長で、連続殺人事件で殺された人たちは、拷問に携わっていた人たちだった。
その拷問がなかなか衝撃的だ。1989年当時の韓国といえば、ソウルオリンピックが開催された翌年で、韓国が国として経済的に急成長していた頃だ。もしかしたら過酷な状況で働く労働者たちが声を上げていたのかもしれないが、実際にモチーフとなった出来事があったのかどうかは定かでない。
キム先生ことチャン会長が行っていた行為は、非人道的で悪質。労働者たちを「虫けら」呼ばわりし、自分が行っている行為は「愛国者そのもの」だとのたまう。全くおぞましい話だ。
チャン会長の別荘で家政婦として働いていたチャッキの祖母が、こうした過去の悪行を知ってしまったために殺されてしまった。それでも平然とチャッキを抱きしめ、慰めていたチャン会長の神経は理解できない。
チャン会長の悪の遺伝子は、息子のチャン・ギド(チョン・ジニョン)にもしっかり引き継がれていた。チシクが愛した女性を傷ものにし、自殺に追い込んだのだ。この女性がシベクの実の姉だった。
最終話で、チシクはギドと30年を経た直接対決をする。「とにかく謝ってほしい。あなたを許したい」と懇願するチシクにギドが投げかけた言葉が、父親と同じ「虫けら」だった。なんというひどい言葉の暴力だろうと愕然とする。
結局チシクは、ギドに突き落とされて亡くなってしまう。愛した女性を失い、復讐のためにかつて警察署で拷問担当だったダルジェを使って殺人を繰り返してきたが、結末はあっけないものだった。
最初から最後まで、チャン会長とギドが更生しなかったのは、妙にリアルで説得力のある描き方だと感じた。
最後に結託するチャッキとシベク
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シベクの正体も明らかになった。本名はウン・ヒジュン。キム先生こと、チャン会長に父親を警察署に連行された少年だった。シベクの父親は無実の罪で拷問され、獄中で亡くなっていた。そして母親は拷問を受けたショックで記憶をなくしてしまったのだ。その母親はシベクと漫才のようなやり取りをしていた家主だったことが判明している。
シベクは、チャン会長のせいで何もかも失ってしまったのだ。「すべてが地獄だった。30年前に僕は死んだんだ」と言うシベクが、他人に成りすまして生きていかざるを得なかったことに心が痛む。
しかしシベクが考える復讐はチシクとは違い、父親や姉の命を奪ったチャン会長とギドがやってきた悪行を白日の下にさらすことだった。そこで祖母を殺されたチャッキと手を組み、ギドを追い詰めていく。
これまで反目し合っていた2人が、ようやく結託したことがうれしい。特に記憶をなくしているシベクの実の母親の前でチャッキが婚約者のふりをし、それをシベクが茶化すところに心が和む。重苦しい雰囲気が続く中で、気持ちが安らぐ貴重なシーンだ。
チャッキとシベク、優秀な弁護士である2人が手を組んだら、怖いものなしだ。瞬く間にギドを追い込み、そのせいでギドは精神錯乱に陥る。自分がしてきた悪行を反省することもなく、気が触れてしまったギドに同情はできないが、憐みのまなざしを向けるチャッキと同じ心境になる視聴者がほとんどだろう。
恋愛の予感がするチャッキとシベク
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最終話で、これまで視聴者が抱えてきた謎が一気に回収されていく。物語についていくのが精一杯の中、チャッキとシベクにちょっとした変化が起こった。
チャッキが祖母の死の真実を知り、シベクの過去を調べたあと、2人は向き合い約30年前に起きた悲劇を話し合う。チャッキの祖母がチャン会長に殺されたということがシベクの心を動かしたのだろう。「悔しくて悲しい想い」を抱える者同士として、シベクが静かに涙を流し、チャッキは今にも嗚咽しそうな状態で大粒の涙を見せるところは、ジーンと胸に迫るものがある。
かねてからこの作品には恋愛要素はないといわれてきた。しかし筆者は最終話で、チャッキとシベクが将来恋人同士になるのでは…という予感がした。
ポイントとなるのは、シベクの実の母親だ。記憶をなくしてしまったから、相変わらずシベクが自分の息子だと思っていないが、チャッキのことをシベクの婚約者だと思い込み「結婚式はいつ挙げるんだ?」と何度も2人に質問する。
チャッキがシベクの過去を聞き出すために「婚約者」だと嘘をついてしまったのが事の始まりだが、シベクの母が「結婚」を口にするたびに、2人はまんざらでもない表情をしている。
そして物語の最後、法廷でチャッキが30年前に起きた悲劇を暴こうとする瞬間、チャッキの父親がシベクの母に向かって「今からシベクさんの婚約者がカッコいいことを言いますよ」と言う。「婚約者」というワードが、チャッキ、シベク、シベクの母以外の第3者の口から発せられたことに驚いた。
「嘘から出たまこと」。まさにチャッキとシベクはこのパターンになるのでは…と感じた。
つらい過去を背負った2人が、理解し合えるパートナーになる。何よりこの2人はとってもお似合いではないか! この物語を観てきた一人として、そういう展開になったらいいなあとしみじみ思った。
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■筆者プロフィール
咲田真菜
舞台・映画・韓国ドラマの執筆を手掛けるフリーライター。映画『コーラスライン』でミュージカルに魅了され、あらゆる舞台を鑑賞。『冬のソナタ』で韓国ドラマにハマって以来見続け、その流れで韓国映画、韓国ミュージカルにも注目するようになる。好きなジャンルはラブコメ、ファンタジー、法廷もの。ドロドロした愛憎劇は苦手。好きな俳優はイ・ビョンホン、イ・ジョンジェ、ヒョンビン、キム・ドンウク、チャン・ギヨン。いつか字幕なしで鑑賞したいと韓国語を勉強中。