大人気!まいまい京都のバーチャルツアー
京都を楽しみたい人に、ぜひおススメしたいガイドツアーがある。京都の住民がガイドする京都のミニツアー「まいまい京都」である。まいまいとは「うろうろする」という京ことば。まいまい京都は、その名の通り、魅力あふれる京都の町を隅々まで楽しめる、気の利いたガイドツアーの数々を届けている。
2011年のまいまい京都立ち上げ以来、代表をつとめるのが以倉敬之さん(34)。一貫して大事にしてきたのは「人の魅力」だと語る。一般的なガイドツアーが、観光地の名所をマニュアル通りに紹介するのとは正反対に、まいまい京都では、マニュアルがないままツアーがスタートする。しかし、マニュアルなどなくても、選りすぐりの魅力あるガイドさんが町の歴史や日々の生活を語ってくれて、楽しくないはずはない。自然体で接し合うからこそ、にわかに京都に来た参加者も、町の空気のなかに入っていける。ファンやリピーターも多く、企画した多くのツアーは、すぐに定員に達する。
しかしながら、今春、新型コロナウィルスの感染が拡大すると、真っ先に「不要不急」との扱いを受けたひとつが観光だった。まいまい京都も、緊急事態宣言の発令を受け、4月1日のガイドツアーを最後に、リアルでの企画はすべて中止。代わりに急きょ考え出したのが、ビデオチャットサービスのZoomを利用したバーチャルツアーだった。初開催となったのは、4月19日の「森の案内人と、バーチャル森ツアー」。機材の扱いをはじめ慣れないことばかりで、4日前からしか参加受付を開始できなかったが、それでも150名もの参加があった。「コロナ禍のなかでもガイドツアーを存続できる」と希望を感じた。
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5月に二条城でバーチャルツアー「史上初!非公開エリアに徹底潜入オンラインツアー」を企画すると、700名にものぼる参加申し込みが殺到した。8月には蓮久寺で「怪談和尚のひんやりナイト」を企画するなど、お寺を舞台にしたバーチャルツアーも好評だ。11月21日には東福寺の「史上初、禁断エリア徹底潜入オンラインツアー」を控えている。
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バーチャルツアーにおいて以倉さんがこだわるのは、「オンラインでしかできないこと」だという。「カメラを設置して配信すれば、一般非公開のお堂でもお参りいただけます。和尚さんの怪談も目の前で語り掛けてくれるような臨場感があります」と、リアルのガイドツアーにはない力を指摘する。
この9月からはリアルでの参拝も再開したが、バーチャルツアーへのニーズは相変わらず根強いという。「オンラインツアーはいつでもどこでも参加できます。一方で、リアルでの町歩きは、五感で感じる楽しみがあります。二種類のガイドツアーは、まいまい京都の両輪になっていきそうです」と以倉さんは語る。
お坊さんと二人きりの時間をどう使う!?
昨年サービスを開始したお坊さんとのマッチングサービス「Hey!Bouz」もまた、コロナ禍で岐路に立たされた。
「Hey!Bouz」は、条件に合うお坊さんとお寺でまったり話せたり、お出かけしてお茶を飲んだりできるなど、お坊さんと“密”な時間を過ごせるという極めてユニークなサービスである。詳しくは以前に書いたことがあるので、そちらを参考にしてほしい。
しかし、お坊さんと“密”がウリのこのサービスは、“密”を嫌うコロナ禍とは当然ながら相性が悪い。そこで、この9月1日~15日に試みに行われたのが、Zoomのビデオチャットを利用した「オンラインHey!Bouz」である。30分1,000円という料金体系のわかりやすさと、自宅に居ながらお坊さんと話せる手軽さも手伝って、多くの方々に気軽に利用してもらえたという。
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かねてから「Hey!Bouz」に登録している私も、なかなか時間がとれず1日だけだったが、お2人とマッチングが成立しホスト僧侶となった。本堂のご本尊をバックにカメラを構えてスタンバイして待っていると、お相手の方が入室して来られる。そこから30分、水入らずの時間が流れていく。
マッチングしたお坊さんと、画面越しにどんな時間を過ごすかは、完全に利用者次第である。最初の1回は悩み相談だった。生きづらさを語ってもらって、それを聞いたり、少し経典の言葉を紹介したりというひととき。リアルで相談を受けるほうが適確に相談に乗れるようにも思うが、初めてのお寺を訪ねて知らないお坊さんと話すのは、並大抵の勇気では足りない。まずはオンラインで対話する仕組みがあるのは、お坊さんに心を開いていく大きな一歩に違いない。
そしてもう1回は、先の悩み相談からうって変わって、「せっかくお坊さんを貸し切りにできるなら水族館デートしたい」というリクエスト。お坊さんとの時間をどう過ごすかは自由だとはいえ、あまりの奇想天外さにさすがに戸惑った。開始時間になると、水族館でスタンバイしている女性と中継がつながった。私はカメラ越しにペンギンやクラゲなどを愛でながら会話し、和やかな時間が流れていった。アイデアひとつでこんな面白い使い方もあるのかと舌を巻いた。
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常識の眼鏡を外し、コロナ禍にもお寺体験を
Hey!Bouzもやはり、まいまい京都と同じく、オンラインでのサービスを継続していくつもりだという。相変わらず安心してお寺に行きにくい状況にあるのはつらいが、コロナ禍によってお参りの形やお坊さんの接し方の新たなバリエーションが生まれたのは、明るいニュースにちがいない。
要するに、コロナ禍を生かせるかどうかは、企画を作る人や、サービスを利用する人の発想次第である。「お寺にバーチャルでお参りなんて……」という常識の眼鏡を外し、Zoomのような最新のテクノロジーをはじめ、なんでも活用できるものは活用していく。お寺にかかわる人たちの創意の数々によって、お寺体験のニューノーマルが誕生し始めている。
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【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。
■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
■Twitter https://twitter.com/senrenja
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