「ホテルローヤル」は、2013年に第149回直木賞を受賞。累計発行部数85万部(電子書籍を含む)を超えるヒット作で、発売元の集英社では「ここ5年で発売した中で最も売れた」単行本・電子書籍。北海道の釧路湿原に立つラブホテルを舞台に、現在から過去へ時間軸を遡り、ホテルの盛衰とそこを訪れる人々の生と性が、切なくも瑞々しいタッチで描かれる。映画では、原作の持つ魅力をそのままに、閉塞感のある日常を離れ、ホテルローヤルの扉をひらく男女、問題を抱える経営者家族・従業員のそれぞれの人生模様が、ホテルの経営者家族の一人娘・雅代を主軸に描かれる。
メガホンをとるのは、『百円の恋』(2014年)や『きばいやんせ!私』(2019年)などで知られる武正晴監督。そして主演の波瑠が演じるのは、「ホテルローヤル」の経営者の一人娘・田中雅代。美大受験に失敗し、どことなく居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルの仕事を手伝うことになっていく役どころ。ひとときの“非日常”を楽しみ、安らぎと寂しさを胸にホテルを後にする客たちを、少し冷めた目線で眺めながら仕事に励むという難しい心情を繊細に表現していく。
波瑠は同作について「ラブホテルで働く人と訪れる人がいて、そこにうまれる微妙な温度差を役者さんたちがどんな風に表現するのかととても楽しみになる脚本でした」とコメント。自身の役どころについては、「雅代はどこかいつも傍観者というか、起こる状況の中心にはいない人で。それも自覚していてどこかコンプレックスだったりもして。いつも所在なさげで可哀想にも思えるけど、悲劇のヒロインにはなりきれないような曖昧さだったり、中途半端にも見えるところが彼女の人間味になればいいなと思って演じていました」と語った。
映画『ホテルローヤル』は、2020年冬に全国公開。