
ハイセンスはここ数年積極的に電子ペーパーを採用したスマートフォンを発表している。2017年1月にラスベガスで開催されたCES2017で「A2」を発表して以降、毎年のように両サイドのディスプレイサイズの大型化を進めてきた。A6Lは流行の水滴型ノッチディスプレイを搭載している。

A6Lの表側は6.53インチフルHD+のLTPS液晶を搭載。このまま見ると普通のスマートフォンに見える。CPUはオクタコアプロセッサ、メモリ6GB、ストレージ128GB、3800mAhのバッテリーとスペックはミドルハイレンジクラス。カメラはフロント面に2000万画素を搭載しフェイスアンロックにも対応する。

本体右側面には指紋認証センサーを備える。両画面がディスプレイのため最近採用が増えているディスプレイ内蔵型の指紋認証センサーを搭載するスペースが無いためこの位置を採用している。

左側面にはA6Lならではのボタンを搭載。ディスプレイの表と裏の表示を切り替えるボタンだ。A6Lはカラー液晶側の画面表示をそのままモノクロ電子ペーパー側に切り替えて表示できるのである。

実際に表と裏を表示して並べてみた。電子ペーパーは5.8インチHDと表面より若干サイズと解像度が小さくなっている。カメラは2400万画素+800万画素の標準+ワイドの組み合わせだ。電子ペーパーはモノクロだが16諧調のグレースケール表示委ができるのでカラーのアイコンなどもそれなりに表示は見ることができる。

電子ペーパー側の表示は画面を切り替えるときに全体を書き換える動作が1秒弱かかるため、ブラウザの操作など一般的なスマートフォンとして使うときは慣れるまで若干の違和感を覚えるかもしれない。また画面を切り替えた直後は前画面の残族がしばらく残ることもある。そのためスマートフォンとして利用する場合は素直にカラー液晶側を使ったほうがいいだろう。

一方、電子書籍やコミックの表示では紙に印刷したインクのように文字は読みやすい。またバックライトもないので目も疲れにくい。アマゾンのKindleなどの電子ペーパー端末同様、電子書籍を読むときは裏面側を積極的に使いたいと思えるだろう。

写真表示やカメラ利用時がどうなるか気になるところだが、写真はグレースケールで表示するので細かいディテールはわからないものの、大体のイメージはつかむことができる。カメラを起動するとプレビュー画面は表示が段階的に動くものの、全体のイメージを見てシャッターを押すくらいのことはできる。電子ペーパーだからといってカラー表示が完全にNGというわけではない。

さてA6Lと同時に展示されていたのが「A5」だ。A5は5.8インチ電子ペーパーディスプレイのみを採用した完全なモノクロ表示端末。ブース説明員によると小型のブックリーダーとしても使いやすいのではないかとのこと。

A6Lは暗いところでは液晶側を使えば画面表示は問題なく見ることができるが、A5は電子ペーパーのため外光がなければ表示が見えない。そこでA5はディスプレイの下部側にLEDライトを埋め込み、バックライトのように電子ペーパーを明るく表示することができる。

テキスト表示はA6Lの電子ペーパー同様に見やすい。ただページ切り替え動作はA6Lより若干緩慢で、CPUは1つ下のクラスのものを搭載しているようだ。写真(絵画)の表示もそれなりにできている。

電子ペーパーを使ったスマートフォンはロシアの旧YotaPhoneなど複数のメーカーが手がけたがほとんどが撤退してしまった。電子ブックリーダーも今では電子ペーパーより液晶採用製品が増えている。ハイセンスがここまで電子ペーパーにこだわる理由は不明だが、2つの画面の使い分けが新しいアプリケーションを生み出す可能性に期待をかけているのかもしれない。価格次第では面白い存在になりそうだ。

<TEXT:山根 康宏>