5Gは現在利用されている4G/LTEの次の世代に当たる、新たな移動通信システム。これを通信キャリアのネットワークに頼らず、国の免許を受けた企業や団体が独自に運用するものを、総務省などではローカル5Gと呼んでいる。ちなみに、このようなプライベートネットワークは現在、電波の届かない採掘現場などで利用されており、4G/LTEを利用していることから「プライベートLTE」と呼ばれている。
幕張メッセで開催された「Interop Tokyo 2018」でも、いくつかのブースでローカル5Gについての展示が行われていた。
■高精細かつリアルタイムな遠隔監視が可能に

NECでは「ローカル5G時代に向けた取り組み」と題して、現在検討しているローカル5Gのユースケースとして、以下のような用途が紹介されていた。
【建設】
・自動施工
・遠隔操作
・AR作業員管理
・資材管理
・入退場管理
・AR図面/構造物検査
【プラント】
・自動運転
・設備監視
・AGV(自動搬送)
・ドローン設備監視
・構内無線化
【鉄道】
・高度業務支援
・路線診断侵入者監視

5Gのメリットは大容量かつ低遅延、そして多数同時接続が可能な点にある。このことから、同社では何かタイムラグがあると不具合につながるような、映像監視の現場などでのニーズを探っているようだ。ただ、高周波数帯を利用するため、通信範囲は見通しの良いところで数百メートル。遮蔽物があるような場所での利用には不向きのため、基本は屋外で使用するか、屋内であればスタジアムやプラントのような開けたところでの運用になるとのこと。
将来的にはベンダーとして周辺機器を提供するほか、ローカル5G事業者としてのビジネスの展開も検討しているという。
■ローカル5Gの自営免許は今年末に制度化、来年には2.5GHz帯での運用も可能に!?

一方、ファーウェイのブースでは、4Gを使ったプライベートネットワーク「地域BWAサービス」を提供する阪神ケーブルエンジニアリングが、ローカル5Gについての展示を実施。さらに、情報・通信統括部 中村光則氏が「阪神電車が描く地域BWAとローカル5Gの未来」と題してセミナーを行った。

中村氏によると、ローカル5Gの自営免許は2019年末に制度化される見込みとのこと。工場内やビル1棟、ワンフロアといった狭いエリアで、自由に使えるネットワークになるという。工場であればファクトリーオートメーションなどに利用が可能になるとのことだ。


なお、同社では通信事業者として、もう少し広範囲でのサービス提供を想定しているようだ。従来の地域BWAサービスの通信設備を更新することで、アンテナの電波が届く範囲内で5Gネットワークを提供。こうした電気通信事業用のローカル5Gについては、免許が2020年夏に制定される想定をしているという。

「現在4Gで使われている2.5GHz帯も、来年夏にはローカル5Gに一部組み込まれます。このため、現在の地域BWAサービスからエリアを変えずに、ローカル5Gを提供することも可能です」
ただ、当初は28GHz帯でのサービス提供になるため、既存の地域BWAサービスのエリア内に、28GHzの小さな基地局を設置して、運用していくことになる。工場や空港、スタジアムなどで、より高速なネットワークが必要な場所には、それを補完する形でローカル5Gを提供していく計画だ。


「実は、5Gの周波数帯はローカル5Gが独占的に使えるものではないんです。28GHz帯であれば衛星サービス、5GHz帯であれば自衛隊の使用周波数帯と重なるため、必ずしも24時間安定して使えるとは言い切れません。ですが、地域BWAサービスのエリアが重複していれば、何かあったときにもバックアップとして利用できます」
