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指といってももちろん本物ではなく、指のような形をした「MobiLimb」という名のロボットだ。スマホの背面にコントローラ部分を装着し、スマホのマイクロUSBポートにコネクタを接続して使用。自動的に見やすい角度に動いてスマホスタンドになってくれたり、電話がかかってくると机をトントンと叩いてくれたり、スマホが落ちないよう支えてくれたり、スマホケースと一体になって動く。
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指のほかにも指の部分を猫じゃらしやライトなどのパーツに付け替えていろいろな機能の拡張が可能だ。動きにあえてリアルさは追求せず、どことなくぎこちないままにしているところがかえってキモ面白く、それが注目を集めるきっかけになったようだ。
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MobiLimbの研究そのものはかなり真面目なもので、フランスのTelecom ParisTech大学とソルボンヌ大学、そしてフランス国立科学研究センター(CNRS)が協力して開発が進められ、ユーザーインターフェイス技術に関する学会(UIST)でも発表されている。チームリーダーであるMarc Teyssier氏は「MobiLimbを使うことによって、人間が持つ身体機能をさらに拡張できる」とコメントしている。
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モバイルデバイスがまるで生き物のように見えることで使い方に変化が現われるかもしれない、といったことも研究目的のひとつ。そのため、指バージョンは映画の特撮に用いられる本格的なシリコンを使ってつくられていて、ここだけは本物のような感触が追求されている。
マンガやアニメの影響でロボット文化が根付いているに日本に比べ、欧米ではロボットなどの「擬人化」には否定的な意見も少なくない。だが、ボットや音声アシスタントの登場でそうした考え方も徐々に変化しており、便利な道具を自分自身の一部として受け入れられるようにするという研究はこれから増えていくかもしれない。
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MobiLimbそのものは、5 DoF(5つの関節を接続した5自由度)と呼ばれる小型のロボットアームで、スマホの重さを支えるだけのトルク(ねじりの強さ)は十分に装備。上述したようにさまざまなオプションを付けることも可能で、コントローラやセンサーを使って自在に動かせる。また、APIも公開されているので誰でも簡単に開発でき、アプリと連携させられるので、そう遠くないうちに、スマホに欠かせないオプションとしてヒットしそうだ。
文:野々下裕子
※この記事はTIME&SPACEの転載記事です