防犯&セキュリティ関連の最新トレンドから特に気になる話題に注目し、関係者にインタビューをする本企画。今回は拡大し続けるIoT分野において、最大の課題といわれるセキュリティ対策で重要な役割を期待される、ハイパーバイザー「FOXvisor」を手掛けるSELTECH(セルテック)の代表取締役社長である江川将偉氏に話を伺った。 近年大きな注目を集めている「IoT(Internet of Things)=モノのインターネット」。身の回りにあるあらゆる「モノ」がインターネットに接続し、さまざまな情報をやり取りすることで新たなサービスやソリューションを創出するIoTは、今後大きな市場拡大やビジネスチャンスが期待される分野だ。●課題だった製品価格とセキュリティレベルの兼ね合い IoTの拡大により、2020年にインターネットに接続する端末数は300億台とも500億台ともいわれているが、一方で大きな課題とされているのがそのセキュリティ対策。 ネットワークに接続する以上は当然コンピュータウイルスや不正アクセスへの対策は必須だが、電子レンジや掃除機にPCと同等の高性能なCPUやウイルス対策ソフトを乗せるというのは現実的ではなく、もしも高性能なCPUを積むならば製品の価格も大幅に上がってしまう。そこで廉価なCPUを搭載したIoT機器に対しても一定のセキュリティを担保できるのが、SELTECHが提供するハイパーバイザー「FOXvisor」だと江川氏は語る。 江川氏の説明によれば、ハイパーバイザーとは、ハードウェアの仮想化を実現する制御プログラムのこと。一つのハードウェア上で複数のOSを並列して動作させることを可能にし、例えばサーバを仮想化した場合、1台の仮想サーバがダウンしてもその他の仮想サーバに影響を与えないという障害耐性の向上や、余剰リソースの有効活用などのメリットがあるという。 SELTECHの「FOXvisor」は、PCやサーバー向けのフル仮想化技術からの流用ではなく、組み込み機器向けに特化したハイパーバイザー。CPUコアに直接実装し、複数のOSをそれぞれ安全に独立して同時に動作させることが可能だ。容量は32Kバイト、CPUに与える負荷もわずか1%というコンパクトな設計になっており、幅広いプラットフォームに対応することができる。ソフトウェアなので既存の機器に後から追加することも可能だ。●不正アクセスなどの脅威も根幹部分を隠すことで対応 江川氏によれば、IoT機器に「FOXvisor」を導入し複数のOSを動作させることで、不正アクセスやウイルスなどによる侵入を許してしまった場合でも、重要な情報やシステムの根幹部分は隠されたセキュアOSで管理できるのが、「FOXvisor」をIoTセキュリティに使ううえでのキモになるという。 安価なCPUを使いながらも、重要な部分はしっかりと守る。「FOXvisor」を家に例えるなら、外から見たら、防犯上頼りなく見える造りであっても、実はその地下には堅牢な金庫やシェルターが隠されていて、大事なものはしっかりと守るといったイメージとなる。 同社は「FOXvisor」を標準搭載した組み込みシステム開発者向けスターターキットの販売開始と、購入者向けのトレーニングコースの開催を発表している。 世界的に見てもさらなる普及が見込まれるIoT。しかし普及が進めば、現段階では想像もしないようなリスクが顕在化する可能性は十分にありうる。今回紹介した「FOXvisor」は、廉価なCPUを搭載するようなIoT機器においてもしっかりとセキュリティ対策を行える技術として重要な役割を果たしていくだろう。